『木枯らしの少女』に込めた意味合い

月野ルナ

●今回の作品はとても明るいと感じました。なにか村田さん自身に心境に変化があったのでしょうか?
「特に心境に変化はないです。自分ではその変化というものを意識していないけれども、指摘されたらそうだなと思いますね」

●過去の作品と比較してもテーマは変わっていないんだけど、写真的には明るくなっている。
「テーマというか、見せ方が変わっています。以前だったらシュチュエーションを見せようとして、あまりモデルにフォーカスしていなかった。

だけど、カメラがデジタルに変わると、撮り方も変わりましたね。中判の大きいフイルムのカメラで据えて撮っていると、どうしてもシュチュエーションの作り込みから入る。それが手持ちのデジタル一眼レフカメラになると機動的になってくる。だから、モデルにフォーカスするようになってきましたね」

●色彩も明るいし。心境の変化があったのかと思いました。
「撮る時は自然光しか使っていないんです。自然光とレフ版。だからどうしても手前が明るくて、バックが暗くなる。だからよけいに明るく見える。前だったらライト使ったり、レフランプとか当てて、部屋の隅まで全部、明るくしていたんです。そしてプリントの時に周りをグッと暗く焼き落す。その違いが出ているかもしれませんね」

『木枯らしの少女』というタイトルに込めた意味合いとは?

「2014年末くらいから庭の枯木で菜乃さんとかを絡めて撮影していて、そのまま2015年も何故かモデルさんと枯木を絡めて撮っている。枯木になんだか自分を投影しているみたいで、僕も結構老人だし、何だか谷崎潤一郎の『痴人の愛』っぽい世界かな?」

●『木枯らしの少女』というタイトルが素敵ですね。
「タイトルは苦し紛れ(笑)。木枯らしの少女というのは、スウェーデンのポップ・ミュージックグループABBAの前の男2人、ビョルン&ベニーのヒット曲『木枯らしの少女』が好きだったから(笑)。あと、2015年はずっと、枯れ木を使ってばかりで撮っていたからですね。

庭に生えていたけど、立ち枯れたやつを切り倒して、それを撮影に使えるだろうと思って取っておいた。使っていたらなんとなく、そればかり使っていた。

前は蔦を使っていたんです。蔦が絡みつく感じが多かった。でも、僕にはもう蔦のような生命力なくて、枯れ木のようになってきたから、まあ、枯れ木をモチーフにして、枯れ木が老人で、老人が若い女の子に襲い掛かっているようなイメージだとか。なんか、そういう老人とした枯れ木、イコール自分みたいな感じで(笑)」

●枯れ木がすごくいい感じになっていますね。
「14年末に菜乃さんで一度使って忘れていた。ルナちゃんの時にまたモチーフとして持ち出しました。15年3月の終わり時点から枯れ木を使うようになった。3月、春だというのに枯れ木だという(笑)」

●ありがとうございました。

※村田兼一写真展『木枯らしの少女』(2015年11月20日~12月6日/神田・神保町画廊)にて。

写真家・村田兼一の新たなスタート

なぜ少女たちは写真家・村田兼一のモデルになって撮ってもらいたいと思うのだろうか? ひとつにはモデルに志願する少女たちは「自分を表現したい」と思っている子が多いからだ。その表現方法とは、自分の個性を殺し、村田の素材になろうとすること。

しかし、村田はそのなかから個性を探り、自分の作品に重ねていく。村田とモデルの関係は写真家と被写体という関係を超えて、人間と人間の信頼性の中で向き合い、作品世界を作り上げていく。そこに少女たちはエクスタシーを感じているのかもしれない。

北見えり

ヌードとしての表現の可能性

今年、2016年は村田兼一の作家生活20周年となる。記念した個展が、乙画廊(大阪)にて4月22日~30日に、神保町画廊(東京)にて5月27日から6月12日に開催される。この20年の村田の集大成となる予定だという。

村田兼一写真展『春風の少女』
2016年4月22日~30日 日曜定休
乙画廊
大阪市北区西天満2-8-1大江ビルヂング101
TEL06-6311-3322
※詳細はギャラリー公式HPを参照ください。

『作家生活20周年を斜めから観る』展
5月27日~6月12日 月火定休
神保町画廊
東京都千代田区神田神保町1-41-7安野ビル1階
TEL03-3295-1160
※詳細は神保町画廊公式HPを参照ください。
※詳細は村田兼一公式HPを参照ください。

フェチライター。本業もライターで編集者。専門はアートとカルチャー。著書も数冊ある。僕にとってのフェチとは【解放と表現】。フェチなカルチャーを発信します。