津田 結局ツイッターは、自分が好む意見を集める、自分自身の「世間」をつくるメディアだと思います。

東日本大震災が起きたときに、住所別に東日本と西日本のユーザーの投稿をチェックしてみたんですが、落ち込んで激しく悲観的なムードの東日本に対し、西日本ではごく日常的な話題が繰り広げられていました。例えば今日見たアニメの感想とかを、普通に投稿している。

佐藤 興味深いですね。

津田 それはそれでいいと思うんですよ。自分の身近な価値観、心地いい空間を共有し合えるって大事なことですから。

ただそれだけだと「自分の意見は社会全体からしたら少数派かもしれない」という客観的な視点がなくなってしまいますね。一般的には、現実の社会や読書経験によって自分と社会の偏差に気付くのですが。

よくネットでは「マスコミは情報操作をしている」という話題が出てくるけれど、ネットはネットで偏りがあるんです。

ロックフェラーの言葉は炎上防止の役に立つ

佐藤 それとネットを見ていて不思議に思うのは、なぜか貧乏人は罵らないんですよね。あれだけ罵詈雑言があふれているから「黙れ、この貧乏人が」という捨て台詞もあるだろうと思うんだけど、出てこない。

津田 その傾向はありますね。

佐藤 書き込む人が貧乏人かどうかはともかく、「ネットを見ている人にも貧乏人はいるんだ」という共通意識があるんでしょうか。思うままに書いているように見えて、意外と自己検閲が働いているんですよね。

ほかにも不思議な文化タブーがあるように思います。「貧乏」に限らず経済的な話ってあまりしませんよね? 「いますごく貧乏なんだ」という話も、「株でいくら儲けた」という話もあまりないような。

津田 もともと日本の文化って、金の話を嫌いますよね。金持ちが「これくらい財産あ
ります」なんていうと、まず間違いなくたたかれる。

佐藤 その話で思い出しました。余計なことかもしれないけど、これから稼ぐ若い人は、『ロックフェラー回顧録』を読まれるといいと思う。この中にロックフェラー3世が、祖父であるジョン・ロックフェラーに言われた言葉があります。

いわく、誰でも億万長者になることはできるが、その富を3代維持するのは難しい。なぜなら、大衆のやっかみによって反発に遭うか、国家権力につぶされる。あるいは両方によってつぶされるから。

津田 それは堀江さんの事件と照らし合わせると、すごく示唆的ですね。