5. 大人になって分かる、本当の『ライオン・キング』
冒頭で書いた通り、子供心には納得できない箇所が多く、正直そこまで好きな作品ではありませんでした。
ですが、"超実写版"『ライオン・キング』は、「実写映像による説得力」「丁寧な心情やストーリー描写」「新たな解釈や映像体験」で、昔感じていたモヤモヤを、すべて腑に落ちさせてくれたんです。
大人になって気づく、父ムファサの大きな愛
シンバを襲うハイエナをムファサが助けた後、シンバが「父さんには怖い物なんてないんでしょ? 」と、無邪気に問いかけます。
対して「今日は人生で1番怖かった。お前を失うかもしれないと思ったから。」と、答えるムファサ。
この台詞の凄さは、大人になってみないとわからないなと、強く思いました。
その後のヌーの暴走シーンも、親目線だと無我夢中さに心を打たれて、もう…
親にとって愛する子どもは、自分の全てを投げ打ってでも守るべき存在なんですよね。
自分が子どもの頃にはわからなかった感情を、リアルな描写で気づかせてくれました。
必要だった"ハクナ・マタタ"の精神
全てを忘れて気楽に暮らすシンバに、疑問を抱いていた幼少期。
これも大人になって観てみると、シンバのメンタルケアには必要な精神なのかも、と思えました。
突如起こったあまりにも辛い出来事と、対する自責の念が重すぎて、何もかも忘れ去らないと自分を保てなかったのかもしれない。
父の死を毎晩思い出したり、責任に苛まれ続けたり、時々故郷に帰って、遠くから苦しむ母やナラの姿を見たり…なんて育ち方をしたら、きっと幼いシンバの心は壊れてしまうと思う。
少々強引な展開だと思ってたけど、そのぐらいしないと、あの辛い現実をシンバも観客も消化できないのかもな、と思います。
例えば、仕事で人間関係がキツかったら、無理して壊れるより、休んだり環境を変えても良いし、自分の幸せは自分で選べるもの。
時には辛いことを忘れて、新しい場所で新しい人生を歩むのも、悪くはないんじゃないかな。
これまでに色んな作品を見て来て学んだ事や、自分が少し大人な考えが出来るようになった事で、そう思えるようになりました。
これは実写版の本作で、より深く丁寧に、キャラクターの心情を描いてくれていたおかげだと思います。
完全実写化ゆえにストーリーは全てわかっているはずなのに、こんなにも新たな解釈や感想を持たせてくれた"超実写版"『ライオン・キング』。
目の前いっぱいに広がる迫力の映像や、生命溢れるシンバたちの活躍を、ぜひ劇場で体感してみて下さい!
『ライオン・キング』2019年8月9日(金)全国公開