羽柴秀吉から真田信幸へと変身した大泉洋

 10日放送分から舞台を大坂に移し、新たな人物も多数登場した大河ドラマ「真田丸」。脚本の三谷幸喜は、群像劇を得意とし、演じる俳優をイメージしながら脚本を書く“当て書き”をすることでも知られている。

 例えば、三谷が監督した『清須会議』(13)の完成披露会見では、利に聡くいつも目が泳いでいる人物として描かれた池田恒興役の佐藤浩市と、ばか殿の典型として描かれた織田信長の次男・信雄役の妻夫木聡が「俺は監督からこんなふうに思われていたのかとショックを受けた」と語っていた。

 今回は配役という面から、「真田丸」と『清須会議』、そしてもう一本の三谷監督作『ギャラクシー街道』(15)との関係を探ってみたい。

 信長亡きあと、織田家の跡目を決めるための“談合”を描いた『清須会議』。「真田丸」の出演陣では、大泉洋がお調子者の羽柴秀吉を演じたほか、小日向文世が真面目な丹羽長秀を、鈴木京香が秀吉に恨みを持つ信長の妹のお市を演じた。

 それが「真田丸」では一転、大泉が生真面目な真田信幸を演じ、小日向が秀吉、鈴木が秀吉の女房の寧を演じている。三谷は器用な大泉、小日向、鈴木には、わざと正反対の役を演じさせてみたいと考えたのだろうか。

 そのほか、黒田官兵衛から出浦昌相となった寺島進はどちらも策士役という点で一致している。迫田孝也は、目立たない蜂屋頼隆役から、真田信繁(堺雅人)に従う矢沢三十郎頼幸という大役へと出世した。

 「真田丸」と『清須会議』を対で見ると、描かれている時代が近いだけに、三谷がそれぞれの俳優の個性をどう捉えているのかがうかがい知れるようで面白い。

 一方、登場人物は皆宇宙人という珍作SFコメディー『ギャラクシー街道』。こちらは一見、時代劇の「真田丸」とは全く関係がないように見えるが、さにあらず。

 段田安則のツキのない裏切られキャラは滝川一益に、遠藤憲一のこわもてなのに気弱な純情キャラは上杉景勝に、山本耕史のナルシシストキャラは石田三成にと、それぞれ「真田丸」の役柄に引き継がれているように思える。

 もしかすると三谷は『ギャラクシー街道』でいろいろと試してみたのではないか。もっとも段田は大河ドラマ「秀吉」でも一益を演じていたから、三谷にもそのイメージが残っていたのかもしれないが。

 ところで、三谷作品の出演者には“常連”が多い。「真田丸」でも、「黙れ小童!」のせりふが印象に残る室賀正武役の西村雅彦と交代するかのように、大坂編では賤ヶ岳の七本槍と呼ばれた平野長泰役で近藤芳正が、片桐且元役で小林隆が登場してきた。同じく常連の梶原善と阿南健治は、あるいは大物の佐藤や西田敏行、役所広司らの出番はあるのか…。などと妄想すると「真田丸」からますます目が離せなくなる。

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