アニー役の松田亜美(左)、菊池愛(右) 中央は松本明子 アニー役の松田亜美(左)、菊池愛(右) 中央は松本明子

今年で日本公演27年目を迎えるミュージカル『アニー』が、4月28日に東京・青山劇場で初日を迎えた。今回、アニーを演じるのは約9000人の中からオーディションで選ばれた松田亜美と菊池愛のふたり。ほかの子役たちもダブルキャストになっており、松田がアニーを演じるスマイル組と菊池がアニーを演じるトゥモロー組の2組に分かれて公演日程が組まれている。

ミュージカル『アニー』チケット情報

物語はクリスマスを間近にひかえた1933年のニューヨークが舞台。小さな孤児院で暮らす11歳のアニーの夢は、両親が迎えに来て一緒に暮らすこと。孤児院を訪れていた億万長者のオリバー・ウォーバックスの秘書であるグレースに気に入られ、クリスマスの間だけウォーバックスと一緒に屋敷で過ごすことになったアニー。お金で全てを手に入れてきたウォーバックスだったが、どんなことにも感情いっぱいに幸福を表現し、笑顔が絶えないアニーと過ごすうちに、人を愛し人生を分かち合う大切さを思い出し、次第にアニーに惹かれていく。ウォーバックスはアニーとずっと暮らしたいと思うようになり、養女に迎えたいと告げるが、本当の両親と暮らす夢をあきらめられないアニーはその申し出を断ってしまう。傷つきながらもアニーの力になりたいウォーバックスはアニーとともに両親を探し始めるのだが……。

ミュージカル『アニー』の魅力は何といっても子どもたち。初日前夜の27日に行われたトゥモロー組の公開リハーサルでは、アニー役の菊池や、孤児役、タップダンサーの子どもたちがのびやかな歌声と元気なダンスで楽しませてくれた。菊池の歌声は堂々としていて12歳とは思えないほど力強い。また、子どもたちの演技のうまさはもちろんだが、それ以上に、真っ直ぐな気持ちが伝わってきて、観ている側がパワーをもらえるのは『アニー』ならではだろう。共演する大人の俳優たちが子どもたちに向ける温かい表情も印象的だ。目黒祐樹が演じる仕事人間のウォーバックスが、人を愛する心を次第に取り戻していく機微は、むしろ大人の観客の方が感情移入しそうだ。デビュー30年目で初のミュージカルに挑んだ松本明子は、意地悪な孤児院経営者のミス・ハニガンを熱演し、ソロパートを見事に歌い上げた。昨年に続き、彩輝なおが演じる秘書のグレースとミス・ハニガンのやりとりからは、穏やかな会話の中にも相手への反感がちらりとみえ、シンプルなストーリーの中にも奥行きのある面白さが感じられる。演出も、ダイナミックな舞台転換や、アンサンブルによるアクロバティックなダンスで飽きさせない。作品自体は子どもが楽しめるように作られているが、人を愛することが深く描かれ、大人だからこそ気づかされるところもある。親子で楽しむのはもちろん、疲れた大人にもお勧めの作品に仕上がっている。

公演は5月13日(日)まで東京・青山劇場にて開催。チケットは発売中。また、8月より宮城、大阪、愛知、富山の各地で上演される。

取材・文:大林計隆

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