広大なShenzhen Convention and Exhibition Centerの中で開催されたCE China

【中国・深セン発】メッセ・ベルリンは4月20日から4月22日までの3日間、中国版IFAともいえるCE Chinaを初めて中国・深センのCZCEC(Shenzhen Convention and Exhibition Center)で開催した。昨年5月、全米家電協会(The Consumer Electronics Association=CEA)がアジア初の家電見本市CES ASIAを上海で開催したが、IFAも続く形になった。

深セン市の南、香港に程近いところに位置するCZCECは、九つのホールで計10万5000平方メートルもある巨大な見本市会場。CE Chinaはその中で1万5000平方メートルのホール2を使って開催した。出展社は150社以上だが、本家ベルリンのIFAや、昨年初上海で開催したCES ASIAに比べても見劣りがする感は否めない。しかし、世界を代表する欧・米の家電見本市が中国で開催するようになったということは、世界の家電市場にとって、中国の位置づけがますます大きくなってきていることの証しだろう。

CE ChinaとCES ASIAとの大きな違いは「車」だ。昨年上海で開かれたCES ASIAでは、派手なプライベートショウを行ったアウディーや、特設テントまで用意してプレスイベントを行ったメルセデスのように、自動運転を目玉にする自動車メーカーの存在がとても大きく、まるでモーターショウのようだった。一方、今回深センで開催したCE Chinaでは、車メーカーの出展はなく、BOSCH、SIEMENSなど、欧州で大きな存在感を持つ家電メーカーの出展が目立った。

CE Chinaを深センで開催するにあたり、イベントを主催するメッセベルリンのJens Heithecker IFAエグゼクティブディレクターは「トレードショーというスタイルをとるため、香港にも近く商談にも便利な深センを選んだ。また中国の消費者は意外に海外のメジャーブランドを知らない。中国随一ともいえるハイテク都市深センでまず、メジャーブランドの知名度を上げたい」と語った。

海外メーカーの知名度を上げる試みとしてブランド紹介パネルのコーナーを設けた。日本メーカーも含めた海外メーカーの紹介を広いスペースを使って展開。中にはパナソニックやソニーといった日本のメジャーブランドのパネルもあったものの、ブースを構えて出展しているのはオンキヨーのみという状況だった。

欧米のメジャーブランドとしては、BOSCHやSIEMENSが入り口近くに大きなブースを構え、大型の白物家電を中心に展示していた。特に両社ともタブレットやスマートフォン(スマホ)でコントロール可能な「HOME CONNECT」製品の展示に力を入れていた。例えばBOSCHでは、タブレットに操作説明が表示されるため取扱説明書は不要。また異なる製品を統一的な操作感でコントロールできるのも特徴だ。自動診断モードで故障の有無などを自動的に検知することもできる。オーブンや洗濯機などを外からコントロールすることもでき、外出先から中身を確認できる冷蔵庫などを紹介した。

CE Chinaで注目したいのは、蘇寧電器、国美電器といった、中国の2大家電量販店が出展したことだ。さらに、アリババやアマゾンなど、成長著しいネット販売店も出展した。

蘇寧は中国国産のコミュニケーションロボットを多数展示しながら、スマートリビングやスマートキッチンを商品の組み合わせで展示し、家庭のイメージがわくような、用途提案を厚く行っていた。国美は、ゆるキャラ「ゴーメーちゃん」を複数展開し、家庭用各種センサーやスマート鍵などを幅広く展示。家庭でのIoTの活用をアピールした。アマゾンは商品の展示こそなかったが、全世界に広がるネットワークを強調。アリババはVODなどの最新機器を展示して人目を引いていた。

中国国内メーカーの出展も盛んだった。特に深センは中国随一のハイテク都市でもあり、深セン企業の出展も目立った。KC08など、プレミアムヘッドホンながら価格が魅力的なOSTRYも深センメーカーの一つ。小さなブースには人だかりが耐えなかった。

「世界初」を掲げた自転車用のスマートヘルメット「LIVALL」を出展したのは、Shenzhen Qianhai LIVALL IoT Technologyだ。Bluetoothでスマホなどと接続し、後部に着けられたLEDで右左折の合図を送ったりできるほか、内蔵スピーカーで音楽を楽しむことができる製品だ。

自転車関連と言えば、中国でスポーツ配信を行うLetv Sportsが開発したスマートバイクも出展された。内蔵するGPSを使ってハンドル中央に距離や速度などが表示されるばかりでなく、音楽を楽しみながら走ることもでき、内蔵カメラで写真を撮ることもできる。

また、映像関連で注目を集めているのはVRだ。特に360°の写真や動画への注目は日に日に高まっており、CE Chinaの随所でVRゴーグルを試す姿が散見された。瀋陽氏のTecheも360度カメラを出展して注目を集めていた。幾分大きめな筐体のカメラはまだまだ工夫の余地があるように思えたが、中国でも急速にVRが広がりそうな予感させる出展だった。

来場者の興味を引いたのはやはりハイテク関連のブースが多かった。深センで初開催した中国版IFA、CE Chinaがアジアを代表する家電の見本市に成長するかどうかは、家電の中でもとりわけハイテク、IoT関連の企業がどれだけ盛り上がるか、にかかっているようだ。なおCE Chinaの「本家」ともいえる、コンシューマエレクトロニクス製品の見本市「IFA 2016」は、9月2日から7日までドイツ・ベルリンで開催する。(道越一郎)