小津安二郎作品のプロデューサーが語る『わが母の記』

2012.5.2 14:41配信
『わが母の記』について語り合う山内静夫氏(右)と原田眞人監督

井上靖の自伝的小説を原田眞人監督が映画化した『わが母の記』が公開されている。本作は、原田監督が「巨匠・小津安二郎監督の作品に近づきたい」と撮り上げた作品だ。そこで、『早春』(1956年)以降の6作品で、小津組のプロデューサーを務めた山内静夫氏に作品を鑑賞していただいた。山内氏は本作をどう観たのだろうか?

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本作は文豪・井上靖が自身の人生や家族との実話を基に綴った『わが母の記〜花の下・月の光・雪の面〜』を原作に、普遍的な家族の愛を描いた物語。役所広司が作家・伊上洪作を、樹木希林が母親の八重を、宮崎あおいが三女の琴子を演じている。

試写室から出て、原田監督と対面した山内氏は「監督さんのいる前だと緊張するね」と笑みを見せながら「とても爽やかな印象。映画としてどっしりしているし、そこに“人生”が描かれている」と鑑賞した直後の印象を述べる。「一家がいて、それぞれが人生を背負っている。映画は物語だけではなくて、そこに“人生”があるのがいい。みんなが色々な気持ちで生きている空気がしっかりと漂っていて、ここ最近の映画にはない日本映画を観た気がしました」。

原田監督は「改めて小津安二郎監督の作品を集中して勉強して、これまで小津作品の“本当の良さ”に気づいてなかったな、と。小津さんという存在には憧れていましたが、この3年で画期的に印象が変わりました。その結果としてこの映画が出てきた」と振り返り、山内氏は「映画を観ている間は集中していたので小津作品のことは思い出すことはなかった」と語るも「主人公の作家と母の姿を観たときに小津作品のことが頭に浮かびました」という。

大学で教鞭をとっている原田監督は「今の若い世代は小津監督や黒澤明監督を知らなくても、少しガイドをしてあげると、とてもいい感性をもっている。だからこそ、良い芸術をちゃんと伝えるのが僕らの世代の役割なのではないかと思うようになった」と言い、山内氏は「撮影所がなくなってしまったのが大きいですよね。かつては撮影所で映画だけではなく色々なことを先輩から学ぶことができた。映画の世界にとって撮影所がなくなったことが本当に悲しい」という。

以前より原田監督は「この映画は若い人に観てもらいたいし、僕が小津さんへの愛を込めたこの映画を観てもらうことで、そのうちの何パーセントかの人が小津映画に興味をもってほしいんです。そうやって文化を継承していかないと新しいものは生まれない」と語っている。本作を公開中の劇場では、若い観客も多く足を運んでいるそうだが、彼らが本作をどのように観たのかも気になるところだ。

『わが母の記』
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