iPadが約7割――過去2年間のタブレット端末の売れ行きを振り返る

2012.5.2 21:32配信
アップルのiPad(左から初代iPad、iPad 2、3月16日発売の新iPad)

2010年1月、おなじみのパフォーマンスとともに米Appleの故スティーブ・ジョブズ氏がiPadを発表してから2年以上がたった。初代「iPad」は、日本では10年5月28日に発売され、今月末でちょうど2周年を迎える。また、今年3月16日には第3世代の「新しいiPad」が発売になり、値下げされた前機種「iPad 2」を含めたiPad全体の売れ行きは好調だ。今回は、そのiPadを中心に、「ポストPC」として期待される新ジャンル「タブレット端末」の販売動向を振り返ろう。

量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、アップルがiPadを発売した10年5月から12年4月までに、「タブレット端末」に分類した製品が1台以上売れたメーカーは36社。11年春頃から、PCメーカーを中心に参入が相次いだ。12年4月までのメーカー別累計販売台数1位はアップルで、シェアは69.7%と、約7割に及ぶ。アップルを筆頭に、上位8社だけで全体の9割以上を占め、実質的な選択肢はそれほど多くはない。10年だけをみれば、選択肢はほぼiPadしかなく、参入メーカーが増えた11年もiPadの優勢が続いた。この2年間は、iPadの独壇場だったといっていい。

iPad以外では、日本エイサーの「ICONIA TAB A500」、ソニーの「Sony Tablet S」シリーズ、レノボの「IdeaPad Tablet A1」など、低価格や独自の機能・特徴を売りにしたAndroid搭載タブレットが売れた。その結果、11年8月以降、アップルのシェアはそれまで60~90%台から50%台に低下し、新iPad発売直前の12年1月・2月は5割を切った。しかし、3月は68.7%まで回復し、2位以下を再び引き離している。

タブレット端末の11年の販売台数は前年比203.4%に達し、前年の2倍以上に拡大した。ただ、アップルのiPadは、前年比140.6%にとどまり、SIMカードスロットを搭載したWi-Fi + 3Gモデルに限ると、84.7%と前年を下回った。Wi-Fiモデルは178.9%と伸びており、Wi-Fi + 3Gモデルが足を引っ張った格好だ。12年は4月末までの累計で、iPadのモデルチェンジの時期が前倒しになったこともあって、タブレット端末全体で前年同期比276.7%、iPadだけでは218.9%と、いまのところ前年を大幅に上回っている。

初代iPadは、発売直後の品薄状態が解消された10年夏頃から、Wi-Fiモデルの販売台数が3G対応モデルを上回るようになり、皮肉にもより薄く、軽く、持ち運びやすくなったiPad 2の発売によって、Wi-Fiモデルの優勢が決定的になった。iPad 2以降、iPad全体の販売台数のおおむね7~8割、月によっては9割近くをWi-Fiモデルが占め、単に「iPad」といった場合、Wi-Fiモデルを指す状況になりつつある。いつでもどこでもインターネットに接続できる手軽さと、9.7インチの大きな画面、バッテリ駆動時間の長さを兼ね備えた「真のiPad」といえる通信機能つきモデルの低迷は、通話機能と持ち運びやすさの点で勝るスマートフォンとの競合と、現状ではキャリアを選ぶことができない不自由さが影響しているかもしれない。

●タブレット端末の販売台数はスマートフォンのおよそ3分の1

月ごとのOS別販売台数構成比の変化をみると、11年9月以降、Androidの伸びが著しい。12年1月には、わずか1ポイントの僅差ながら、初めてAndroidがiOSを上回った。しかし3月は、新iPadの発売とiPad 2の値下げ効果で、2か月ぶりにiOSが1位に返り咲いた。累計では、iOSが69.7%、Androidが23.4%、Windows 7が3.9%、その他が0.8%だった。なお、Windowsの次期OS「Windows 8」は、PCとタブレット端末の両方に対応する予定。iOSとAndroidのほぼ一騎打ちの状況を打破することができるのか、今後の動きに注目したい。

ちなみに、同期間のスマートフォンのOS別販売台数構成比を集計すると、iOSが30.4%、Androidが68.8%、その他が0.9%となり、こちらはAndroidが優勢だった。内訳はスマートフォン75.8%、タブレット端末24.2%で、タブレット端末の販売台数はスマートフォンのおよそ3分の1にとどまる。「BCNランキング」の集計対象外のキャリアショップや携帯電話専門店、アップル直営店などでの販売分を考慮すると、実際の差はもっと大きいだろう。また、スマートフォンとタブレット端末を合算すると、OS別の構成比は、Android(58.1%)、iOS(40.1%)の順だった。タブレットではiPad=iOSが圧倒的に優勢ながら、スマートフォンを含めた「スマートデバイス」という視点でみると、すでにAndroidはiOSを追い抜いている。

●“タブレット”にユーザーが求めるものは?

最後に、タブレット端末の最新ランキングを紹介しよう。新iPadは、集計の都合上、3月16日の発売前からランキングに登場し(詳しくは<Retinaディスプレイの「新iPad」、予約だけで機種別トップ10に5機種ランクイン>を参照)、発売前から発売直後の数週間に渡って大量に売れた。「iPad 2」を含めたiPad全体の販売台数は、発売日を含む3月第2週(2012年3月12日~18日)をピークに徐々に減少しているものの、新iPad発表前に比べると、高い水準を維持している。

新iPadだけではなく、値下げした「iPad 2」のWi-Fiモデルも継続して売れており、予想外に多いと感じる。iPhoneユーザーやアップルファンを中心に、自宅で使うセカンドデバイスとして、「この値段なら買ってもいい」と判断し、あえて最新機種ではなく、前機種の「iPad 2」を選んだ人も多いようだ。

2012年3月の機種別ランキングでは、1位から8位まですべてアップルのiPadが占め、2位・5位はiPad 2だった。4月は、新iPad Wi-Fiモデル64GBのホワイト(MD330J/A)がシェア8.9%でトップに立ち、2位から7位まで新iPad/iPad 2の各モデルが並んでいる。通常、別々にカウントしている容量・カラー・タイプを合算すると、3月、4月とも、新iPadがiPad 2を上回っているが、新iPadのライバルは、他のメーカーのAndroid搭載タブレットではなく、同じiOSを搭載したiPad 2という状況だ。

この2年間、タブレット市場をけん引していたiPadも、新iPad発売以降の売れ行きや店頭の様子をみると、欲しい人、興味を持った人はすでに購入し、需要はほぼ一巡した感がある。タブレット端末全体の市場拡大には、シェアNo.1のiPadの”進化”だけではなく、魅力的なライバル機の存在が不可欠だろう。ただ、「iTunes」や「iCloud」を通じてシームレスに連携するiPhoneとiPadの関係とは異なり、Androidの場合、スマートフォンとタブレット端末を同じメーカー・ブランドに揃えるメリットは余りなく、値下げされた「iPad 2」や低価格なAndroid搭載タブレット「IdeaPad Tablet A1」の好調が示すように、価格勝負になりつつある。逆にいうと、潜在的なニーズは高く、価格設定とアピール次第でまだまだ伸びしろがある、有望なジャンルといえるだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。

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