これは「自分を商品にする」ことについての本である。人が世間に対して名前を売ることの目的はさまざまだ。大観衆の前でスポットライトを浴びることが夢だったという人がいれば、実業界で功を成し遂げ、次の勲章として名声が欲しくなったという人だっているだろう。だが、勝間和代が有名人になることを目指した理由はそのどちらでもない。『「有名人になる」ということ』は、勝間が自らのビジネス戦略を明かした、興味深い本である。

2007年1月、勝間はそれまで勤務していた証券会社を退職して自身の会社を興した。その目的は社会的責任投資を行うことである。さまざまな社会問題を解決することに熱心な企業に対して投資を行い、この社会をよりよくしていこうという試みだ。だが景気の冷え込みが災いし、2008年5月には会社の定期収入の大半が途絶えるという事態に陥ってしまう。そのとき土俵際まで追い詰められた勝間が思いついたのが「有名人」ビジネスだった。
――わたしの顔を見たときに名前を挙げなくても「勝間和代」だとわかる人の割合を、世の中のおおむね30%くらいまでに上げてみよう。そうなれば、さまざまな形で社会的課題に対する発言もできるようになっているだろうし、10名くらいまでなら社員を雇って給料を払えるようになるかもしれない――そう決意してのスタートでした。