東京電力ホールディングス傘下で電力小売りやガス事業を手がける東京電力エナジーパートナー(東電EP)は5月9日、日本瓦斯(東京・渋谷区、ニチガス)とニチガスグループの東彩ガス(埼玉県越谷市)、東日本ガス(茨城県取手市)、北日本ガス(栃木県小山市)の3社に都市ガス(13A)の年間約24万トン(LNG換算)を卸供給する基本契約を締結したと発表した。

都市ガスの全面自由化が予定されている2017年4月以降に、ニチガスは都市ガスの卸供給を東京ガスから東電EPに切り替える。約24万トンは、ニチガスグループが販売する都市ガスの全量に匹敵する。東電EPの小早川智明社長は、「ガス事業に踏み出すための極めて大きな一歩」と語った。都市ガス小売りの全面自由化に向けて、まずは卸供給からスタートする。

東電EPは、グループ会社の火力発電用などに国内最大級の年間約2300万トンのLNG(液化天然ガス)を調達している。東京湾内に整備されたガス導管のインフラや、電気事業で培ったノウハウを使って、都市ガスと電気の新しいセットメニューの開発や付加価値サービスをニチガスに提供していく。具体的な料金プランの中身についてはこれから検討していく。

●LPガスに続き都市ガスも電力とセット販売

ニチガスグループは、年間売上高約1257億円(2015年3月期)の約6割を占めるLPガスに強みを持つ。LPガスは、すでに全面自由化されており、ニチガスと東電EPは、2015年10月5日に電力とガスのセット販売に関する業務提携委契約を締結し、2016年4月の電力小売り自由化を機に、LPガスと電力のセット販売を展開している。今回、ニチガスが都市ガスの供給を東電EPに一本化したことで、都市ガスの小売り全面自由化に向けた都市ガスと電力のセット販売に弾みをつける。

都市ガスの全面自由化については、制度設計で不確定な要素が多い。今後、東電EPが都市ガスの小売りを直接手がける可能性はあるのだろうか。東電EPの小早川社長は「一般のご家庭に向けても販売できるように検討していきたい」と意欲を示した。制度の不確定要素が多い上、販売する際に資格が必要など、ハードルは高いものの、東電EPにとっては、ニチガスの約30万世帯の顧客に対して、都市ガスと電力のセット提案が期待できる。

ニチガスの和田社長は「約60年間にわたってニチガスは小売り一本でやってきた。認知度の高い東京電力のブランドが販売で使える点は大きい」と販売力に自信を持つ。ニチガスでは、2017年度に11万世帯の新規獲得を目指しており、そのためにはガスと電気のセット料金を「現状の10%のコストダウンをしなければ市場に受け入れてもらえない」(和田社長)とみている。(BCN・細田 立圭志)