MCバトルをテーマとし、ゲストがプロラッパーと対決する音楽番組『フリースタイルダンジョン』のヒットも手伝い、今、日本のヒップホップ、ラップ・ミュージックが熱い注目を集めています。

その長い歴史の中で、数多くの名曲(クラシック)を生み出してきた"日本語ラップ"シーン。中には、一際異彩を放つ超個性的な楽曲も存在しています。

歌謡曲、お笑い、アニメ、特撮、そして、プロレス……様々なカルチャーとヒップホップが融合した結果、この世に誕生した、ちょっと不思議で奇妙なラップ・ミュージックの数々。そんな日本語ラップの異端児的な楽曲を紹介させていただきます!

『PERFECT HUMAN』(RADIO FISH)

お笑い芸人によるラップ・ミュージックの最先端モードが、これ! オリエンタルラジオのお二方が率いる音楽&ダンスユニット、RADIO FISHの『PERFECT HUMAN』です。

昨年末にテレビのバラエティ番組で披露するやいなや、アッパーでアゲアゲな音楽と藤森慎吾さんの高速ラップ、そして、"あっちゃん"こと中田敦彦さんの個性的な振付けで、あっという間に話題沸騰の楽曲に。

YouTubeにアップされた公式動画は、3,000万回以上の再生数を突破し、人気音楽番組にも進出、更にはミュージックビデオも制作され……と、今年に入って更なる新展開が繰り広げられています。

ヒップホップ用語で言うところの「セルフボースティング」(自分の凄さを誇示すること)の極みのような大仰なリリックで、あっちゃんが如何に完璧な人間かを称えるラップは、本気も本気なバックトラックの完成度も相まって、インパクト抜群!

リズム芸の「武勇伝」で一躍人気者となり芸能界に躍り出るも、その大ブレイク故に苦難の道を歩むことになったオリラジが、インテリ芸人やチャラ男キャラとしての再ブレイクを経て、再び「大袈裟なセルフボースティングによる音楽ネタ」という原点に回帰するという軌跡も何ともドラマティックです。

"お笑い"と"音楽"の境界線を絶妙なバランス感覚で突破するパフォーマンスは、オリラジの紆余曲折と不屈っぷりも含めて、リスペクト!

『Blow Your Mind - 森オッサン チョイチョイ キリキリまい』(GEISHA GIRLS)

何故か、日本ではお笑い芸人のコミックソング、ノベルティソングにも引用されることが多いラップ。その歴史を振り返ってみても、いずれも個性的な楽曲が揃っていますが、90年代のポップ・カルチャーを通過した方々にとって決して忘れられない存在となっているのが、このGEISHA GIRLSではないでしょうか?

1994年にデビューを果たした覆面ラップユニット、GEISHA GIRLS。その正体は、ダウンタウンのお二人です!

初期『ダウンタウンのごっつええ感じ』イズム溢れるシュールなギャグセンスに、坂本龍一さんや小室哲哉氏、BOREDOMESにアート・リンゼイといった豪華ゲストミュージシャンによる楽曲を融合させたそのサウンドは、今に至るもオンリーワンな存在感を放ち続けています。

音楽クリエイターの個性が色濃く出た各ナンバーの中でも、特にヒップホップ的な感性が強調されているのが、アルバム『THE GEISHA GIRLS SHOW - 炎の おっさんアワー』収録曲の『Blow Your Mind - 森オッサン チョイチョイ キリキリまい』です。

作曲は、90年代からダンス・ミュージックシーンで活躍し、現在ではロックバンド、METAFIVEの活動でも知られるテイ・トウワ氏が手掛けており、スタイリッシュな音楽とナンセンスなリリックによるラップの組み合わせは、高い中毒性を有しています。

90年代の半ばに、ヒップホップにギャグやユーモアを取り入れたのがスチャダラパーならば、お笑いにヒップホップを引用し、唯一無二の化学反応を引き起こしたのが、このGEISHA GIRLS。日本語ラップを振り返る上でも、決して無視することができない超個性派のユニットです。