ミュージカル『怪人と探偵』フォトコール 撮影:岡千里

新作ミュージカル『怪人と探偵』が、9月14日に神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 ホールにて開幕した。

江戸川乱歩の推理小説を原案に、森雪之丞が作・作詞・楽曲プロデュースを、同劇場の芸術監督である白井晃が演出を手がける本作。キャストには中川晃教、加藤和樹、大原櫻子らが名を連ね、“世界で一番綺麗な宝石”をめぐる大怪盗・怪人二十面相(中川)と名探偵・明智小五郎(加藤)の対決が繰り広げられる。

取材日にまず報道陣へ公開されたのは、オープニング20分。二十面相と明智による最初の対決は、東京スカパラダイスオーケストラのテーマ音楽「憂愁モダン」で彩られ、ジャズテイストのアップテンポな楽曲に乗せたダンスやアクション満載のステージングで華やかに幕を開けた。

続く第6場の冒頭では、慈しむべき大切な“愛”の存在に気づいた二十面相が「世界で一番綺麗な宝石」を高らかに歌い上げる。中川は、盗めず・奪えず・探せない愛の尊さをのびやかな歌声で情感たっぷりに表現。ネコ夫人(高橋由美子)らも加勢する壮大なバラードへ発展した。

抜粋シーンの上演後に行われた初日会見で、森は日本発のオリジナルミュージカル完成にいたった感慨を口にする。目指したのは「日本語の美しい歌」。森とタッグを組み、構想5年をともに駆け抜けた白井は「永遠のライバルである二十面相と明智が奪い合うのは、世界の財宝を超えたもの──という人間ドラマが本作のおもしろさ」と見どころを紹介した。

「音楽・脚本が次第にできあがり、白井さんと対話を重ねて作品のピースがひとつずつ揃っていく過程に立ち会えたことは貴重な経験」と実感を込めて語るのは中川。対する加藤は、ミュージカル『フランケンシュタイン』(2017年)以来の2度目の共演となる中川について「アッキーさんと向き合う度に気持ちが高揚する」と刺激を受けた舞台裏を覗かせる。ヒロイン役の大原は初日を迎えた嬉しさを噛みしめつつ、本作を「千秋楽に向けて変化する作品」と分析。「何度もご覧いただきたいです!」と観客に呼びかけた。

昭和モダンの世界を背景に、乱歩作品の登場人物が躍動する170分(休憩含む2幕)。東京公演は9月29日(日)まで。その後、10月3日(木)~6日(日)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールに巡演する。チケット発売中。

取材・文:岡山朋代