預かりボランティアの世話が行き届いているためか、猫はいずれも毛艶が良く、健康的な印象を受けた。動物愛護センターから引き取られたと聞けば、衰弱した猫をイメージする人もいるかもしれないが、その心配はないようだ。中には、そのまま雑誌のグラビアに出演できそうな美形猫もいた。

もし気になった猫がいれば、会場奥に張られたテント内で直接ふれ合うことができる。預かりボランティアからさらに具体的な話を聞けるので、飼い始めてから「こんな性格とは思わなかった」といったマッチングのミスが起こりにくい。この仕組みは、品種や生年月日くらいしか情報がないペットショップに比べて大きなメリットだ。

会場を訪れるのは、完全にフリーな人だけではない。あらかじめ「ちばわん」サイト経由で預かりボランティアの書いたブログを読み、「この子が欲しい!」と決めてから来る人もいるそうだ。また、本人の提示した条件にぴったり合った猫がいた場合、「ちばわん」側から紹介してもらえることもある。

飼いたいと思った猫がいたら、会場内でアンケートに記入する。そして住宅環境、飼育条件に問題がないと判断されれば、譲渡の流れに移っていく。完全室内飼育や健康管理、近況報告の約束事を盛り込んだ契約書にサインして、まずは1ヶ月間のお試し飼育(トライアル)を行う。実際に猫と暮らしてみて、このまま飼い続けることができるかどうかを判断する大切な期間だ。トライアルで問題がなければ、正式な譲渡が成立する。

譲渡にあたっては、身分証の提示、集合住宅や賃貸の場合、ペット飼育可の契約書などの提示、自宅までのお届は必須となる。「ちばわん」では譲渡までにかかった医療費の一部を新しい家族にも一部負担してもらっている。譲渡時にかかる費用は約2~3万円(2016年5月現在)。助けを待つ保護犬・保護猫にこのお金が使われる。

猫を飼いたいと考えている人は、ぜひこうした譲渡会場にも足を運んでみてほしい。

来場者の顔ぶれと、意識の向上

さまざまな種類、年齢、性格の猫たちと出会える譲渡会。そこを訪れるのは、どんな人なのだろうか。取材中もひっきりなしに人々が来訪しており、その多くが夫婦や親子といった家族連れのようだった。

家族で猫を見に来るメリットはあるのだろうか。「ねこ親会」世話役の女性は次のように話してくれた。

「譲渡会には、できれば猫と同居することになる家族全員で来られたほうが良いでしょう。みんなが納得して同意を得ていないと、飼い始めた後にトラブルが起きる可能性があるからです」(世話役)

家族全員が猫を迎えるのに同意していること、そしてできれば預かりボランティアのブログにも目を通し、猫への理解を深めておくこと。この2つが、譲渡会を利用する時のアドバイスだそうだ。

なお、譲渡会は経費・寄付金などを除けば無料で猫を譲り受けられるが、この“無料”というメリットを求めてやってくる人は少ないという。

「多くの方は、行き場のない猫が殺処分されていることをニュースなどで知り、『猫を飼うのなら失われそうな命を助けたい』と考えて、譲渡会に来てくれているようです」(同)

猫がブームだから、ペットショップで買うより安いから……などという考えではなく、純粋に生命を思いやる心から譲渡会を訪れる人が増えているのは、「ちばわん」をはじめとしたボランティア団体にとって追い風と言えるだろう。