「誰?AKB?」「アイドルとか興味ねぇーし!」小雨がちらつく会場ではさまざまなノイズが生まれては流れていく。そんな声を吹き飛ばすように、真っ直ぐ歌は空気中に伸びていく。2曲目「チャイム!」がはじまるとすぐに雨足が強くなってきて、レインコートを装着するひと、離脱するひと、傘をさすひと、強い雨のなかで焦る人びとの喧騒が空に混じる。だけど9人の歌は、そんな空気にとらわれず雲を突き抜けて青空を目指すように、ただ真っ直ぐ空に響き渡る。

ねぇ流れる汗と 溢れる笑顔が

ここにいる自分だから

誰も止められない 今は振り向かない

目覚めたこの夢が 始まるよ

たくさんのライブを重ねて、強さとしなやかさをたずさえた私立恵比寿中学9人の歌だ。雨も喧騒もノイズも跳ね返すエネルギーのかたまりのような歌だ。学業とレッスンとライブをすべて両立して、体調を維持しながら過酷なツアーをこなしてきた彼女たちの、これまでの成果のすべてをみせつけんばかりのステージに、私立恵比寿中学のライブで体験したさまざまな思いが駆け巡る。

ぁぃぁぃやひなたはより歌が上手になってるし、美怜ちゃんのダンスには生命力が漲っているし、瑞季ちゃんのダンスは指先まで美しいフォーム。「自分にはキレのあるダンスは無理だから」と言ってたなっちゃんも、ものすごいダンスがんばってるし、歌が苦手だといってた裕乃ちゃんやりななんは、歌も表情もすごくよくなった。

「はい、おつかれちゃーん!」「そんなぁ?!」
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「エビ中のボーカロイド」と言われた安本さんは、その冠を捨てて感情豊かに歌を表現するようになったし、真山さんは女優さんみたいに表情を変えて演じている。思えば、3/4にこの場所でメジャーデビューの調印式を行った彼女たち。少女たちは、ずっとずっと「夢はメジャーデビュー」と口にしていた。今日のツアー関東ファイナルは、そんな彼女たちの集大成であり、ついにメジャーデビューを果たした少女たちの未来への意思表明のようにも思える。