芸能活動をしている女性に付きまといを繰り返し、ついには刃物で襲いかかり20ヶ所以上を刺したという痛ましい事件が世間を騒がせています。犯人の男の執拗なストーキング行為、SNSに書き込んだ文面なども報道され、その異常性が浮き彫りになってきました。

常識ではありえない思考をする「ストーカー」という存在。彼らの目に、自分や恋愛相手(女性)をとりまく世界はどのように映っているのでしょうか。

筆者がいた探偵業界は、あらゆるテクニックを駆使して対象者に迫る、いわば「職業ストーカー」でした。また、たびたびストーカー案件にも関わり、多くのストーカーと接してきました。そんなプロストーカーの立場からストーカーの心理を読み解き、付きまとわれた女性が絶対にしてはならない“キケンな思考”を紹介します。

(注:本記事でいう「ストーカー」は、傷害事件を起こすレベルのきわめて重篤な人間を指します。また、すべての事例に合致するとは限らないことをご了承ください)

キケンな思考-1:冷静に話せばストーカー行為をやめてくれるはず

ストーカーも同じ言葉が通じる人間なんだから、話し合えば解決するはず‥‥この考えはキケンです。まず知っておいてほしいのは、ストーカーは脳内に「独自の世界観」が構築されているということです。

彼の世界観では、自分とあなた(被害女性)は必ず結ばれる運命になっています。またはすでに結ばれています。あなたが交際をOKしたかどうかは関係ありません。そして、二人の間を裂こうとするものはすべて敵、あるいは乗り越えるべきハードルと認識されます。

例を挙げましょう。付きまとい行為を見かねた第三者が「おい、あの子はもう彼氏がいるんだからやめろよ」と諭したとします。しかしストーカーは「悪い男に無理やり付き合わされているんだ。心の中では僕の助けを待っているに違いない」と考え、付きまといをやめません。“自分の世界観”と矛盾しないように、現実のほうが歪められてしまうのです。

あなた本人が話し合おうとすれば「僕との交際を真剣に考えてくれている証拠だ」、誰かが注意すれば「二人の仲を嫉妬しているからこんなことを言うんだ」、すでに交際相手がいれば「こいつは彼女を洗脳している卑劣な敵だ」などなど、事実や正論はすべてストーカーの世界観によって書き換えられます。

ストーカーと正常な人間の話が噛み合わない、説得が通じない根本的な原因はここにあります。