今のプロレスの幅広さと豊かさを証明する人たちを入れていきたい

本の中では、長年に渡ってプロレスをライブで見続けてきた三田さんならではの視点が光る。

――選手や関係者に一人ずつフォーカスして、章立てを行われていますが、どういった思いを込めて人選を行われたのでしょうか?

三田:本の冒頭でも書いたのですが、この本を書いたきっかけというのが「今、プロレスがおもしろい!」ということを伝えたいというのがありまして、その為には、今のプロレスは幅が広くて、色んな人がいるということを伝えるのが良いのではないかと思ったんです。

ここ数年であれだけ新日本プロレスがブームになって、新日本に関する本って沢山出たじゃないですか、もしくは、綺麗な女子プロレスラーの写真集であるとか。ですけど、自分がやるのであれば新日本プロレスだけでもなく、女子プロレスだけでもなく、インディーだけでもなく、せっかく20年間やってきて、これだけ幅広く取材をしてきているので、なるべく、その幅の広さっていうのを出したいなという、それは最初から非常に思っていたんです。

ただ、勿論、新日本も書きたいし、DDTも書きたいし、大日本も書きたいしっていう、それは絶対にやろうと思っていて、そんな中で棚橋弘至選手や中邑選手は外せないな、DDTにしても飯伏選手に関しては、絶対に書きたいなと(笑)。

――そうですね、三田さんは、飯伏選手の大ファンで(笑)。

三田:でも、飯伏選手がどうしておもしろいかというと、やっぱり高木三四郎(DDTプロレスリング社長)という人が経営者としておもしろいからだ、と。なので、そこは高木さんも入れたい。

大日本プロレスがおもしろいのは、勿論、選手が素晴らしいのはあるんですけど、一時は本当にダメになるんじゃないかと思われていた団体を引っ張っていったのは、フロントでは間違いなく登坂栄児社長なので登坂さんも入れて、プロレスのフロントっていうのは、どういうお仕事なのかも書きたいと思ったんですね。

――確かに、選手だけではなく、フロントやレフェリーなど、プロレスに関わる様々な方が取り上げられています。

三田:なるべく、今のプロレスの幅広さと豊かさを証明する人たちを入れていきたいなということで、こうした顔ぶれとなりました。

――2010年代の多様性に満ちたプロレスのあり方を紹介しつつ、選手や関係者の言葉によって、プロレスというものを包括的に取り上げるというアプローチなわけですね。

三田:そうですね。勿論、プロレス界って沢山の団体があって、沢山の選手がいて、業績の面で新日本プロレスが光っているんですけど、どこもかしこもお客さんが入っているとは、正直、言い難い部分もあると思うんですね。

でも、この本に出てきた団体や選手っていうのは、間違いなく、お客さんの心を掴んでいるし、評価もされている。どうしてかというと、私が観てきた20年間であったり、10年間で自分たちで考えて、おもしろくなる努力であったり、人に伝える努力であったりしてきた人達が結果的に、評価を集めていると思うんですよ。

やっぱり、考えて、プロレスが復活する道を探っていった、それぞれのやり方を模索していった人達や団体が成功していると思うので、その人達を選びたいなと思ったんですよね。