坂本里咲 坂本里咲

浅利慶太プロデュース公演『この生命(いのち)誰のもの』が、6月4日(土)より東京・自由劇場にて上演される。

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イギリス人作家ブライアン・クラークによって書かれた本作は、テレビドラマとして放映後、1978年にロンドンで初演し、ローレンス・オリビエ賞(作品賞)を受賞した。1979年に日本で初演された後、浅利が8年の歳月をかけて原作者と話し合い、舞台を日本に置き換えた改訂版で1987年から上演を重ねている。不慮の事故で身体の自由を失った若き彫刻家・早田健が選択した“治療の中止”と、病院側の“医の倫理”を巡る裁判を描く。

1994年、2004年の公演で主人公・早田の担当医・北原を演じ、今回は朝田婦長を演じる坂本里咲に話を聞いた。

稽古もほぼ大詰めという時期。「演出家(浅利)が毎日みっちり稽古をつけてくださってます。これまでこの作品は迫力や力で見せていた部分があるのですが、今回は役者ひとりひとりがリアリティを持って、自然にやれと言われています。これまでとはまた違った印象になると思います」。浅利が目指しているのは「本そのものの感動を、役者が透明な媒体になって客席に届ける」というものだという。「俳優は書かれているものを自分の体を通して言葉で伝えていくしかない。だから、言葉には厳密。一音でも落ちたら、お客様は『え?』ってなりますよね。そうなったときにはもう物語の世界からはずれて、役者の言葉を聞き取る方に意識が向いちゃう」と坂本は、浅利が独自に作り上げた発声法で、一音も落とさないよう、今でも訓練は欠かさないという。

1994年から3度目の出演となる坂本は、演じる中で自身の変化も感じるという。「歳を重ねることで主人公の想いがわかるようになりました。以前、演じたときは、早田は特別な存在だと感じてたんです。特殊な考え方をする人だと。それが今はすごく共感できる。若いときはとにかく好きなことを一生懸命やっていればよかったのですが、役者をやめようかと悩んだ時期があり、それ以降、役者としてどう生きたいか、自分らしく生きるとは、と考えるようになり、作品が近くなりましたね」。

主人公・早田はこれまで日下武史や石丸幹二とベテランが演じてきたが、今回は若手の近藤真行が演じる。「演出家には『役者として本に向かうだけじゃなく生きることを実感しろ』と言われながら、彼は今すごく一生懸命やっています。これまでとは全く違う雰囲気ですよ」。

「“生命の尊厳”というと重いですけれども、生きることは素晴らしいと思っていただける舞台です。テーマを問うというものではなくて、温かい人間ドラマですので、気軽に来ていただければ」。

『この生命誰のもの』は、6月4日(土)から6月11日(土)まで、東京・自由劇場にて上演。

取材・文:中川實穗