霧矢大夢 霧矢大夢 撮影:福家信哉

2013年に演出やキャストが一新され、“リボーン版”として生まれ変わったミュージカル『マイ・フェア・レディ』が、再び上演される。オードリー・ヘップバーン主演の映画でも広く親しまれる本作は、ロンドンの下町の花売り娘イライザが、言語学者ヒギンズ教授のレッスンで麗しい貴婦人へと生まれ変わるというシンデレラ・ストーリー。前回公演よりイライザ役を務める元宝塚歌劇団男役トップスターの霧矢大夢に話を聞いた。

ミュージカル「マイ・フェア・レディ」チケット情報

前回は霧矢にとって宝塚退団後の“女優”デビューとなった作品。「イライザはハッキリと物を言う女性なんですが、一方で女性ならではのいじらしさもあって。そのバランスの取り方とかがすごく難しくて、“女心が分からない!”と思いながらお稽古していました(笑)。その後いろんな女性の役を経験させていただいて、最近は、男役を経験したからこそ客観的に女性の内面を捉えて演じられることが楽しくなってきましたね」。そんな霧矢を、今回も寺脇康文が受け止める。霧矢はもちろんカンパニーにとっても頼れる存在だ。「本当に大らかで明るいヒギンズさんで、自分がどう出ても受け止めてくださるんです。カンパニーの中でも兄貴的な存在で、とても頼りにしています。今回またどんな関係が作れるのか、楽しみですね」。

宝塚在団中も英国を舞台にした作品に出演することが多かった霧矢。その度に本作で見せ方を研究していたという。「独特な格式、階級社会のこと、下町の人の振舞い、上流階級の振舞いなど、いろんなことが参考になる教科書のような作品だったのですが、男役でしたのでイライザには全然焦点を当てていなかったんです。もっとちゃんと見ておけば良かったですね(笑)」。

繰り返し観てきた中で霧矢が感じる作品の魅力は、すべてのキャラクターが魅力的であることと、普遍的なテーマがあること。そして、単なるシンデレラ・ストーリーではないと話す。「楽曲もストーリーも素晴らしく、ミュージカルの醍醐味が詰まっていると思います。男女の心の距離感などが甘く切ないメロディでイキイキとコミカルに綴られていく、すごく魅力的な作品ですね。イライザが安定を求めるか、荒波を選ぶか、平らな道を選ぶか…。そうやって人生の岐路に立たされることって誰にでもあると思いますので、共感しながら観ていただきたいですし、多くを語りすぎない結末の描かれ方も粋だなと思いますので、お客様にも想像しながら楽しんでいただきたいです」。

公演は、7月10日(日)から8月7日(日)まで東京芸術劇場 プレイハウス、8月13日(土)・14日(日)愛知県芸術劇場 大ホール、8月20日(土)から22日(月)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。チケットは発売中。

取材・文:黒石悦子