「まさか自分たちが」という気持ちで、防犯対策はしてなかった(原)

――ハイエースは警察に届けても「出てこないよ」と言われてしまったりするんですよね?

Shunp ハイエース専門の窃盗団がおるんです。ハイエースが一番盗まれとるし、ハイエースは需要があるんですよ。ハイエースはタフやから、20万キロ越えても走りますからね。一度、千葉の方でハイエース専門の窃盗団が捕まったんですけど、そのまま海外に出荷されたり、車体を潰してエンジンだけ持っていかれることもあるらしくて。

原 盗った翌々日にはコンテナに乗ってるらしいですね。

Shunp そう。だから下手したら、違うバンドマンのハイエースがぺちゃんこの状態で上下に積まれてるかも知れん。

原 コンテナの中で対バンしてるかも知れない(笑)。

――あと変な話、盗みやすいっていうのもあるんですかね?

Shunp ノウハウが分かってるんでしょうね。ハイエース共通の鍵の開け方、エンジンのかけ方みたいなのがあって。鍵はしてなかったんやろ?

原 もちろん。ただ、防犯対策的なこともしてなかったんですよ。

Shunp ウチは防犯ブザーは付けとったんやけど、夜中に鳴っても分からんよな。

原 防犯ブザー対策があるかも知れないですしね。バンドマン同士で話してて、ハイエースが盗られやすいことも聞いてたし、FUNKISTとかに実際に盗られた話も聞いてたんですけど。「まさか自分たちが」という気持ちがあったんで、防犯対策をしてなかったんです。

――「ウチだけは」みたいな気持ちは、ハイエース盗難に限らずあるし、危険ですよね。

Shunp あと、バンドマンってスケジュールが把握しやすいから、狙いやすいと思うんです。例えば、このライブハウスに出るって分かってたら、その近くに行けばあることが分かるし、どの時間帯に人がいないかも分かりますからね。本番あったら確認出来ないし、狙いやすいよな。俺が犯人やったら、そうするもん(笑)。

――NICOTINEの機材車が盗まれた後、メンバーの雰囲気はどんな感じだったんですか?

Shunp まず社長がガチギレしてて凄かったので、キレる社長を止めるのに必死でした(笑)。あとはツアーバンドにとっての機材車って宝物なので。物は物だと思って、心が乱れ過ぎないようにしようと思いながらも、かなり落胆してましたね……。

盗難保険が下りてきて、新しい機材車を買ったとしても、やっぱり使い慣れた機材車への愛着があるじゃないですか。東名走りながらタバコ吸って、焦がしてもうた焦げ跡とか(笑)。そしたら、愛着のある機材車とは空気が変わるというか。ナイーヴなアーティストやったら、制作にも影響出るんじゃないか? というくらい、バンドにとって大事なものやったんやと思いましたね。

――車もですけど、楽器や機材が盗られるのは、さらにショックが大きいですよね?

Shunp 楽器や機材はキツいッスね。保険も効かないし、自分の使ってた楽器や機材のクセもあるから、代用効かないですからね。物が変わるだけではすまへんのが機材で、機材車には絶対的にお金で解決できないものが詰まってるんです。Sissyはどやった?

原 盗まれた時は割と冷静で、「竿が盗まれなくて良かった!」と思ってたくらいで。

Shunp そう、ああ言う時って意外と冷静よな。

原 ただ、その後に「盗まれた機材と値段をリストアップしてくれ」と言われて、書き出している時に実感が湧いてきて。何十万円というかなりの被害総額が出た時、絶望的な気持ちになりました。8ヶ月連続リリースが発表されてて、レコーディングも控えていて。これまでの音を出せないどころか、アンプもないから音も出せないし。

ギリギリの生活の中、また少しずつ機材を揃えていくことを考えたら、「もう、やっていけないかも」とまで思ってしまいました。車も借り物だったので返さなきゃいけないし、返した後に新しい機材車を買わなきゃいけない。「そのお金をどうやってバンドで埋めていくか?」というところでも、バンド内でかなりモメましたね。