機材を失った絶望的な気持ちから、“解散”の気持ちも一瞬よぎった(原)

――そこで考えたのがクラウドファンディングだった?

原 はい。いざ始めてみたら、みなさんのお陰で目標金額をあっという間に達成出来て(目標金額1,000,000円に対し、現在2,980,000円)。今はやっと精神的にも安定してます。

Shunp ええよな、そんなのあの頃なかったもん(笑)。

――メンバー各々に申し訳なさや後ろめたさといった、別々な思いがあったんでしょうね。

Shunp 「駐車違反はみんなで折半しましょう」とか、色んなバンド内ルールがあると思うんやけど。バンドが所有する一番大きな財産と言える機材車が盗まれてしまったら、誰かが責任を背負うには大きすぎるよな。機材車が盗られてから、ライヴ飛ばしたりしたん?

原 してないです。エレキギターとシールドしか残ってないので、アコースティックで1ヶ月やりました。で、やっと最近、バンドでやるために動き始めた感じですね。

Shunp 機材は買った?

原 ちょっとだけ買いました。盗まれたエフェクターはずっと使い続けてきて満足していたんですけど、この機会に新しい音も試してみようと思って、ビックマフを買ったり(笑)。

Shunp もう、ポジティブに考えるしかないよね。

原 そうですね。またイチから自分の音を作っていくのも楽しいなって。最近は同期とかも入れてたんですけど、今は久しぶりに生音だけで演奏してて。今は同期に頼らず、グルーヴを追求するのがすごく楽しいし新鮮だし、気持ち良いんです。

――Sissyは機材車を盗まれた後、“解散”の言葉も出たみたいですね。

原 一瞬、よぎりましたね。盗まれた後、機材を貸してくれるってバンド仲間がたくさんいたんですけど、「機材を買うめどもなく、人から借りた機材でやり続けるなんて、ギタリストではない」と思ってしまって。メンバーに「このまま、なんとなく続けていくなら、俺は一度ギタリストを降りたい」と言ってしまったんです。

Shunp はぁ~、マジメやなぁ!(笑)

原 いや、マジメなんじゃなくて、「お前らはあまり盗られてないから軽く考えてるだろうけど、俺が一番被害額が大きいんだぞ!」っていうイヤミも含めてだったんですけど(笑)。それで「これからどうするか、もうちょっとマジメに考えようよ!」って話になって。

Shunp まぁ、どうしても現実的なお金の話になるし、バンドの持ち物と個人の持ち物というところのグレーゾーンもあるし、それを数字化するのはみんなシンドいよな。

原 そうなんです。そこで、僕の負担額もみんなでなんとかしたいと思ってくれてたと思うんですけど、自分たちだけでは賄いきれない。そこで僕が「クラウドファンディングはどうかな?」って提案したんですけど、そこでも意見が分かれて……。

Shunp でも、バンドで「いつまでに幾ら稼がなきゃいけない」なんて問題、なかなか出会わないから。これを乗り越えたら強くなると思うわ。我々みたいな人種は、「レコーディングに一人5万円ずつかかる」と言われても手こずるのにな(笑)。

――レコーディングなら投資とも考えられるけど、盗難は本来背負わなくても良いリスクですしね。現状に戻すだけの苦労だから、心も折れそうになりますよね。

原 そうですね。で、クラウドファンディングもモメたんですけど、「心が折れて脱退するメンバーが現れるくらいなら、やってみよう」って話になって。いざ始めてみたら、ファンの人が「Sissyが音楽を続けていくために、私に出来ることがあるなら協力します」というのが、メッセージからもすごく伝わってきて、目標金額も一日で達成してしまって。ここからは感謝の気持ちをしっかり返していかなきゃいけないなと思っていす。