コメデイセンスが光る清水富美加

このドラマは、零治が経営するホテルチェーンの社長室が主な舞台となっているのだが、その社長室の面々も個性があって面白い。

まず、小池栄子演じる舞子とともに、常に零治のそばにいるのが、専属運転手の石神(杉本哲太)。彼も舞子と同じように、もともとは零治の実家の旅館で働いていた男で、零治を父親のように見守っている。

中途採用の美咲が配属された社長室企画戦略部のメンバーは、気に入らないことがあるとすぐに社員をクビにする零治を恐れつつも、零治と美咲の恋を応援するというスタンスで(そのほうが零治の自分たちに対する態度がやさしいから)、見ていても微笑ましい。

ひとり、まったく空気が読めないお調子者の三浦(小瀧望)という若手社員がいるのだが、状況を混乱させつつも、じつはストーリーを進める役割も担っていて、作品のいいスパイスになっている。

そして、もうひとり、美咲といっしょに入社した新入社員で、美咲の相談相手にもなっているのが、清水富美加が演じる堀まひろ。いわゆる今どきの子というキャラクターなのだが、零治の美咲に対する気持ちにもいち早く気づいた人物で、このドラマ全体のバランスを取る役目も果たしている。

清水富美加は、NHKの朝ドラ『まれ』の蔵本一子役が有名だが、最近のバラエティでの活躍を見ても分かる通り、とにかくコメディセンスがある。興味があったら福田雄一が脚本を担当した『恋の合宿免許っ!』(2014年12月に4夜連続で放送)というドラマをぜひ見て欲しいのだが、残念ながらDVD化されていないので、せめて昨年夏に放送された『となりの関くん』はチェックして欲しい。今後も活躍が期待できる女優のひとりだ。

はたして続編はあるのか!?

さて、『世界一難しい恋』のストーリーは、零治がやっとの思いで美咲に告白することができ、何とかつき合うところまではいくものの、キスさえできない零治に美咲が感情的になってしまい、クビを言い渡されるという展開に。しかも、美咲は和田が経営するライバルホテルに再就職してしまい、2人の距離はかなり遠ざかった。

しかし、9話ではお互いの夢を理解する流れからハグをするシーンまで状況は好転しており、最終回がどうなるか注目される状態になっている。

こういうラブコメディの場合、ハッピーエンドは必至だと思うが、どういう状態が2人にとってのハッピーなのか。とにかく“世界一難しい恋”なので、単純にめでたしめでたしのラストではないような気もする。

美咲には自分のホテルをつくるという大きな夢があるので、その部分は続編も可能なパーツになっているし…。

はたしてどんな最終回になるのか。
期待して見守りたい。

たなか・まこと  フリーライター。ドラマ好き。某情報誌で、約10年間ドラマのコラムを連載していた。ドラマに関しては、『あぶない刑事20年SCRAPBOOK(日本テレビ)』『筒井康隆の仕事大研究(洋泉社)』などでも執筆している。一番好きなドラマは、山田太一の『男たちの旅路』。