姫野和樹 (c)スエイシナオヨシ

その夜、“姫野コール”は2度沸き起こった。10月5日・『ラグビーワールドカップ2019』日本×サモア・豊田スタジアムに集った3万9695人は地元で生まれ、地元のトヨタ自動車でプレーするNO.8に名前を大音量で連呼した。

1度目のコールは53分に発生した。インゴールまで残り7mでのラインアウトからモールを押し込み、最後に姫野和樹がトライを決めて24-12とリードを広げると大観衆は地元のヒーローの名を叫び祝福した。

最初のコールがアタックを称えるものならば、次のコールはディフェンスを称えたものであった。59分、自陣インゴールまであと10mでサモアボールのスクラム。しかし、日本のFW陣はピンチにも慌てず騒がず。体格で劣る日本の8名が逆に押し返し、FWリーチ マイケルがタックルをズバリ。続いて姫野が相手ボールを奪い取ろうとジャッカルを仕掛けると、相手はたまらずにペナルティを犯した。日本のピンチを救った姫野に、この日2度目のコールが鳴り響いた。

好守に大活躍した姫野は試合後に「コール、最高でしたね。地元で愛されていると実感した。素直にうれしい!」とビッグスマイルを見せた。『W杯』初トライには「みんなにトライを取らせてもらいました。『W杯』での初めてトライは気持ちいいですね」と喜び、ピンチを脱するジャッカルには「チームがピンチの時にチャンスに変えるようなプレーを心掛けている。ジャッカルが2発決まってよかった!」と安堵した。

この日の日本も神懸かっていた。戦前、ジェイミー・ジョセフHCが「ボーナスポイントは考えていない。いいパフォーマンスをするだけ。いい試合をすれば、いい結果は出る」と語っていたように、日本はペナルティが与えられればPGで3点を積み重ねる戦法を実践する。母国から奪取したCTBラファエレ ティモシーの最初のトライは27分、WTB福岡堅樹の3トライ目は75分だった。

80分を超えて31-19で迎えたラストプレー、自陣ゴールラインまで5mの劣勢で、サモアは7点差以内の敗戦に与えられるボーナスポイント1を果敢に狙いスクラムを選択。だが、ボールをまっすぐ入れない反則を犯し、日本ボールに。84分、2度目のマイボールスクラムから姫野がボールを持ち出し、ラックからSH田中史朗が素早くボールをパスし、松島幸太朗が貴重なボーナスポイント1を追加する4つ目のトライを決めた。日本は3戦目も劇的な勝利を掴んだ。

試合後、指揮官は「ひとりの選手、姫野が何かをやったのではなく、チームとして実行した結果」と全員を称えた。これで3戦3勝・勝点14のA組1位。次は10月13日(日)・横浜国際総合競技場での運命のスコットランド戦だ。日本の挑戦はまだまだ終わらない。

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