現在、デビットカードを登録できるのはGoogle Payだけ

昨年以降、急激に増えている金融機関以外が発行・提供しているスマートフォン(スマホ)を活用したキャッシュレス決済サービス「●●ペイ」の命名ルールから外れた例外が二つある。 一つはNTTドコモの「d払い」で、ペイのつかないQR・バーコード決済サービスだ。非接触決済の「iD(dカード)」と同じく、「dポイントスーパー還元プログラム」の対象となっており、期間中は、最大プラス7%還元となる。9月末に以前から提供していた「ドコモ口座」の一部を取りこんだ送金機能を実装し、おサイフ代わりに使えるウォレットサービスへと進化中だ。

もう一つが今回、主に取り上げる「QUICPay(クイックペイ)」だ。名称に「ペイ」と入っているが、QR・バーコード決済ではなく、カード型の「VISAのタッチ決済」や「Suica」などと同様、読み取り機にかざして決済する非接触決済となる。

Google Payは銀行デビットカードに対応 日常の買い物に便利

他のGoogle提供サービスと異なり、Googleのウォレットサービス「Google Pay」はFeliCa搭載Android端末(おサイフケータイ対応機種)のみに対応。一方、FeliCaを搭載するiPhone 7以降は、Appleのウォレットサービス「Apple Pay」を利用できる。

Apple Payでは、「Apple Pay対応」と記載されたクレジットカードを取り込むと、タッチレスで決済が可能。Google Payは、それに加えてJCBデビット、SMBCデビットなどのGoogle Pay対応デビットカードの情報をそれぞれ登録してタッチレスで決済できる。

違いとして、Apple Payは決済時に原則、指紋認証や顔認証が必要だが、Google Payは不要。ただし、Apple Payでも、設定でエクスプレスカードを有効にし、あらかじめ設定しておくと、エクスプレスカード対応の交通系電子マネー・クレジットカードは認証不要になる。セキュリティ面で都度認証方式、利便性でシンプルな「認証なし」が勝るといえる。

各社のキャンペーンはApple Card上陸に対する布石か

ご存知の通り、国内ではiPhoneシリーズが圧倒的な人気を誇る。家電量販店の実売データを集計する「BCNランキング」によると、2019年1月~9月に累計でAppleのiPhoneのシェアは5割を超え、税別平均単価はAndroid全体よりも1万円以上も高い5万台前半。FeliCa搭載率の高さがそのまま平均単価の差につながっている。

販売台数はもちろん、アクティブ利用者数でもiPhoneとAndroidの差はだいぶ開いているとみられる。専有率の高さから、米国では既に現地時間8月に正式サービスを開始したAppleの年会費無料のクレジットカード「Apple Card」が今後、日本でもスタートし、Apple Pay対応クレジットカードに加わると、少額から高額までキャッシュレス決済シーンを総取りしかねない。かつて「ソフトバンクのiPhone」がケータイのトレンドを変えたように、提携会社と組む日本版Apple Cardは、国内クレジットカード業界を大きく変える「黒船」になるという見方が出ている。

クイックペイのスマホ決済は、クイックペイ+加盟店で利用でき、クイックペイ加盟店ではプリペイドカード・デビットカード紐づけの場合は利用不可となる。この分かりにくさが、いまいち認知度が低い要因の一つと思われるが、ここにきて、クレジットカードの用途の一部を置き換えるかたちで、デビットカードが普及・定着しそうな兆しが出ている。

最も分かりやすい例は、三菱UFJ銀行が10月4日公開した新しいウォレットアプリ「MUFG Wallet」。第1弾は、デビットカード「三菱UFJ-VISAデビット」のみで、実質、Androidスマホ専用キャッシュレス決済サービスとなっている。

銀行口座から直接引き落とすデビットカードとGoogle Payが便利と知られるようになれば、iPhoneからAndroidに乗り換える動機づけになるかもしれない。よりセキュリティを気にするなら、MUFG Walletのように、専用アプリを使う手もある。クイックペイに限らず、便利でスピーディなスマホ決済の本命として非接触決済に注目だ。(BCN・嵯峨野 芙美)