バイク好きなガチのヤンキー、でも実は面倒見の良い姉御肌/『くまみこ』の酒田響

ここまでで紹介してきた2016年度のヤンキー、ギャルなアニメヒロインとは、ちょっと方向性の違うヤンキーっ娘が『くまみこ』の酒田響さん。

それというのも、コミュニケーションはハードヒットなボディーランゲージが中心(つまり、すぐに相手を殴ったり蹴ったりする)で、喫煙者。スカジャンを愛用しバイクが大好き。更に、勤め先はパチンコ屋さんという、まさに"ガチ"にヤンキーな御方なのです。ちなみに、胸はそこそこあります。

『くまみこ』は、東北の過疎な村に住む巫女の中学生女子、まちと人語を喋ることができる(ついでに最先端家電も使いこなせる)ヒグマのナツを主人公にした一風変わったコメディ作品ですが、その舞台設定に相応しい「本当に居そうな田舎のヤンキー感」こそ響さんの持ち味です。

なお、響さんのルックスとファッションも目付きの悪い三白眼に金髪、そして、耳にはピアス。「三白眼」「金髪」「ピアス」は、最早、アニメや漫画のヤンキー、ギャルヒロインにおける「三種の神器」のような扱いになっているのかもしれませんね。

とはいえ、そんな見た目からしてガチヤンキーの響さんではありますが、まちの従兄弟である良夫に対して恋心を抱いており、しかも、それを表に出すことができず相手に対して暴力的に接してしまうという非常に不器用な一面もあります。

この辺りの描写は、一番の萌えポイント。アニメや漫画に登場するヤンキーな女性キャラ特有の"純情さ"を踏襲した見事なキャラクター造型といえます。

また、主役であるまちに対する響さんの接し方も見どころの一つ。その性格故に、威圧的な態度でしかまちとコミュニケーションが取れない響さんなのですが、一緒に洋服を買いに行ってあげたり、地域振興の為に無理やり仕事に借り出されるまちをバックアップしてあげたりと、何気に「姉御肌」な面倒見の良さを垣間見せてくれるのです。

『くまみこ』の劇中では、純朴で極度の人見知りなまちと悪気は皆無ながらも、ついでにデリカシーも皆無な村人たちとの間で起こる軋轢が、ちょっぴり毒の入った笑いとして描かれていています。

しかしながら、響さんとまちの関係性は、そうしたストレスフルな人間関係とは異なる描かれ方をしており、決して器用とはいえないものの優しさを感じさせれくれる響さんの存在は、このアニメにおいて一種の良心となっているのです。

かなりエッジの効いたヤンキーキャラだからこそ、却って、その真の部分が際立って見えてくる。恋愛に対する初心な奥手さも込みで、内面を慈しみたくるヤンキーっ娘ですよね、響さんは。

人気の高まりを見せているギャル&ヤンキーヒロイン、今後の活躍にも期待したいところ!

近年、アニメや漫画作品のヒロインとして登場する機会も多くなったギャルやヤンキーっ娘。

勿論、オールドスクールな「不良漫画」や「ヤンキー漫画」にも可愛くて人気のある女性キャラクターは沢山いましたし、"突っ張った"女の娘をヒロインにしたラブコメ作品も昔から数多くあります。少女漫画の世界では、『GALS!』(アニメ版のタイトルは『超GALS! 寿蘭』)のような先例もありますし。

しかしながら、ギャルとヤンキーっ娘がここまで親しみやすく、ポップな存在として描かれるようになり、ギャグ作品やラブコメにおいて重要な役割を果たすようになった近年の潮流は、そうしたヒロイン像が大好きな人間として本当に嬉しい限りです。

『おしえて! ギャル子ちゃん』のような作品の登場は、アニメや漫画といった文化圏におけるギャル、ヤンキーっ娘のポジショニングを考える上で非常におもしろいトピックですし、ラブコメ作品では「ギャル、ヤンキーなヒロイン×地味な男性主人公」という構図をドラマの中心とした作品も出てきています。

その人気の高さから緊急重版がかかったことが漫画ファンの間で話題になった『はじめてのギャル』などは、まさにそうした作品の好例であり、"ギャルヒロイン"というモチーフを巧みに使った作劇の妙をジックリと堪能したところ。この作品も是非ともアニメで観てみたいです。

ギャルなヒロイン、ヤンキーなヒロインが大活躍した2016年の上半期アニメ。これからも、続々と魅力的なギャル、ヤンキーっ娘が出てきて欲しいですよね。

都内在住の極々平凡なサラリーマン兼、アニメ、音楽、プロレス、映画…と好きなものをフリーダムに、かつ必要以上に熱っぽく語るBLOG「さよならストレンジャー・ザン・パラダイス」管理人。永遠の"俺の嫁"である「にゃんこい!」の住吉加奈子さんと共に、今日も楽しいこと、熱くなれることを求めて西へ東へ。