木下晴香 撮影:源賀津己

帝政ロシア時代、最後の皇帝ロマノフ2世の末娘で、唯一の生き残りと言われるアナスタシア。1997年には彼女を主人公にしたアニメ映画『アナスタシア』が発表され、さらにそこから着想を得て制作されたのが、ミュージカル『アナスタシア』だ。ブロードウェイを皮切りに世界各国で上演を重ねるこの話題作が、ついに日本上陸。そこで主人公のアーニャをWキャストで演じる、木下晴香に話を聞いた。

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『ロミオ&ジュリエット』や『モーツァルト!』など、話題のミュージカルに立て続けに出演、その透明感のある歌声でいずれも好評価を得てきた木下。さらに映画『アラジン』では、プレミアム吹き替え版でのヒロイン・ジャスミン役を演じるなど、役者としてのステップを着実に上り続けている。「『アラジン』のお仕事をやってから、声だけの表現という初めての世界を経験し、言葉の大切さを改めて感じました。それは今後の舞台にも必ず生きていくことだと思います」

木下演じるアーニャは、記憶を失いつつも、家族とともにサンクトペテルブルグで健気に生きる少女。そんな彼女が自らの過去を取り戻すため、詐欺師のディミトリと共にパリへと旅立つことから物語は大きく動き出す。「今回のオーディションの時、“アーニャに求める人物像”というものを聞かされたのですが、それがとても強烈だったんです。まず『おとぎ話のプリンセスのような人材は求めていない』と。えっ、いない!? あっ、はいっ!みたいな(笑)。そして『逞しく、自尊心を持った強い女性であり、記憶をなくしてもひとりで生き抜いてきたサバイバーである』とも。それは自分が演じる上での軸にもなると思います」

その壮大な世界観に加え、衣裳や最新の舞台装置など、「目で見てすごく楽しい作品」と語る木下。これだけの大作への出演を前に、木下が自身への課題として掲げていることとは? 「ミュージカルの世界に入ってひとつ目標にしていたのが、主演であったり、タイトルロールであったり、そして日本初演の作品に携わるということ。今回日本で初めてアーニャを演じるということで、やはり私たちにしか出来ないもの、日本のキャストがやるということに意味を持たせていけたらいいなと。もちろん海外のクリエイティブチームの皆さんとたくさんコミュニケーションを取り、あちらのアプローチをリスペクトしつつ。そしてこれが日本初演のアーニャだと胸を張って舞台に立てるよう、頑張っていきたいです」

公演は3月1日(日)より東京・東急シアターオーブにて開幕。

取材・文:野上瑠美子