SSDの売行きが好調だ。今年に入り、家電量販店の実売データを集計している「BCNランキング」の2016年1月から5月までの販売台数前年比は5か月連続で2ケタ成長。1月は133.7%、2月は141.6%、3月は142.1%、4月は149.2%、5月は153.8%と右肩上がりで伸びている。なかでも、急激に販売台数を伸ばしているのがサンディスクだ。5月の594.1%を最大に、販売台数前年比は市場全体の伸びを大きく上回る。ラインアップを拡充することで幅広いユーザーからの支持を集めており、このまま推移すれば販売台数上半期トップは濃厚だ。

●TLCモデルの安定が追い風、ゲーミング市場の活況もプラス要因

HDDと比較してデータ処理速度が圧倒的に高速で、耐久性・静音性にすぐれるSSDだが、その分、価格が高いというデメリットがあった。SSDが好調な背景には、ネックとなっていた価格が下がり、HDDからの置換えが進んでいる状況がある。

SSDの記録方式にはSLC/MLC/TLCなどの方式があるが、ここ数年で最も低コストのTLCモデルの処理速度や耐久性が安定。性能と価格のバランスがとれていることが、購入の追い風となっている。

ゲーミング市場の活況もSSD置換えの動きを後押しする。OS起動だけでなく、ロード時間の短縮やプレイ遅延の解消、高い静音性能など、ゲーム用途でのSSDはメリットが多い。大容量のゲームデータはHDDに、OSや使用頻度が高いソフトはSSDに、というハイブリッドを採用するユーザーも拡大している。

●サンディスク好調の理由は“ラインアップの幅広さ”

年初からの動きを振り返ると、1月は日本サムスンを僅差で追う展開。それが2月にトップを奪取すると、3月・4月と差を広げ、20%超のシェアを達成している。

サンディスク急進の理由は「ラインアップの幅の広さ」だ。一般のユーザーにも広く受け入れられるエントリーモデルから、プロカメラマンやプロゲーマーを虜にするハイエンドモデルまでしっかりと揃える。

ハイエンドモデル「エクストリーム プロ」、ミッドレンジモデル「ウルトラ II」、エントリーモデル「SSDプラス」の各シリーズは、ストレージ容量の幅が多く、ユーザーは用途・性能・価格を考慮して最適なモデルを選択することができる。

売れ筋はお手頃な「SSDプラス」。15年7月に発売されたモデルだが、今年5月末にモデルチェンジ。従来モデルと比べ、特に書き込み性能が大幅にアップした。240GBモデルは最大読み出し速度が毎秒530MB、最大書き込み速度が毎秒440MB、120GBモデルは最大読み出し速度が毎秒530MB、最大書き込み速度が毎秒400MBに向上。さらに、480GBモデルが新しく製品群に加わった(最大読み出し速度が毎秒535MB、最大書き込み速度が毎秒445MB)。

SDカードやフラッシュメモリで確固たるポジションにあるサンディスクだが、SSDのコンシューマ市場に参入したのは2年前。イメージがまだ薄いユーザーも多いだろう。しかし、サンディスクは法人向けでは、SSDの黎明期から開発に取り組み、ワールドワイドで製品を提供している歴史がある。急伸長も、法人向けで培った技術の裏付けがあってこそだ。

●コンパクトかつ軽量な外付けSSDも登場

内蔵タイプが主力のSSDだが、外付けタイプも徐々に洗練されたモデルが登場してきている。サンディスクが展開する「エクストリーム500/510 ポータブルSSD」シリーズは、防滴・防塵・耐衝撃とあらゆる環境に対応するタフ設計。コースター程度のミニマムボディと100gを切る軽量さが特徴だ。これだけコンパクトで頑丈なら、例えば、アウトドアでリュックにフックでぶら下げて持ち歩くという携帯方法もありだろう。

480GBモデルの場合、最大読み出し速度は毎秒430MB、最大書き込み速度は毎秒400MBと、小型化してもSSDとしての性能は申し分ない。通常のHDDと比較して、最大4倍の高速な処理速度でどんな場所でも快適性を実現する。プロのカメラマンやクリエイターの間では早くも高い支持を獲得しており、一般のユーザーに普及するタイミングも遠くなさそうだ。

定番製品のブラッシュアップだけでなく、次なるトレンドへの目配せにも余念がないサンディスクには、自身のシェアだけでなく市場全体を引き上げるけん引役としての期待もかかる。上半期No.1、そして年間No.1に向けてどのような施策を打ち出してくるか要注目だ。(BCN・大蔵 大輔)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベース(パソコンの場合)で、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。