福岡堅樹 (c)スエイシナオヨシ 福岡堅樹 (c)スエイシナオヨシ

絶対に負けられない戦いではない。引き分けで十分、負けたとしてもボーナスポイントによっては、日本ラグビー史上初のベスト8進出となる。にもかかわらず、日本代表は勝利だけを目指した。

先制トライはスコットランドに許すも、日本は前半の内に逆転する。しかも、SO田村優がPGを外した1分後に嫌な流れを断ち切るトライをふたつ決めたのだ。

田村のロングPGが失敗した後の17分、左サイドを突破したWTB福岡堅樹はタックルを受けると倒れながらオフロードパスをWTB松島幸太朗へつないだ。両WTBを左サイドに集めるトニー・ブラウンアタックコーチの大胆な戦術がズバリとハマッたのだ。

PR稲垣啓太の代表初トライを受けて14-7とした38分、田村が決して難しくないPGを外すも、CTBラファエレ ティモシーのグラバーキックを福岡が巧みなハンドリングでキャッチし、そのまま走り抜きトライ。

さらに後半早々に相手ボールを強奪した福岡がセンターラインから50mの独走トライを決めて、日本は決勝トーナメント進出をぐっと近づけるボーナスポイント1を獲得。28-7とするも、ここから試合は相手ペースに。

49分に近場を攻めてトライを奪うと、54分もFW勢が強引に直線的なアタックでトライを奪った。1トライ1ゴール差となる28-21に迫ると、スコットランドはさらにギアを一段上げた。攻めるスコットランド、耐える日本の構図が続く中、試合は残り5分を切る。

もしここでスコットランドに同点トライを奪われても、日本としては決勝トーナメント進出に支障はない。2トライ2ゴール奪われても28-35である。日本は7点差以内の負けに与えられるBP1を追加し勝点16、スコットランドは4トライ以上のBP1を加えても勝点15。試合時間を考えても、スコットランドのそれ以上の得点は困難なのは明らかである。

言うなれば75分に日本の8強入りは事実上決まったのだが、日本代表には一分の隙も生じなかった。それどころか、78分からスコッドランドがさらなる猛攻を仕掛ける中、日本は鬼気迫るディフェンスを展開したのだった。なぜか。

ジェイミー・ジョセフHCが試合後に「今朝起きて台風で19人の人が亡くなり、12人が未だに行方不明だと聞き、チームにこの話をした」と明かせば、リーチ マイケル主将も「今日はただの試合ではない。(台風で)苦しんでいる人たちのための試合でもある」と語った。

この日の日本代表にとって、スコットランド戦は絶対に勝たないといけない試合だったのだ。ベスト8に進出するためではなく、台風の被害に遭った日本を少しでも勇気付けるために。

『W杯』準々決勝・日本×南アフリカは10月20日(日)・東京スタジアムにてキックオフ。日本のチャレンジはまだまだ続く。

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