――一方「ガベル・マンの真相」は観衆視点の歌詞ですね。鬱屈している、と言ったら言い方が悪いのですが、何かフラストレーションが溜まっていて、伝えたいことがある印象受ける歌詞だなと思いました。

久我:別にお客さんに不満を持ってため込んでるわけじゃないけど、いろんなことに対するフラストレーションはたまっているかも(笑)。

きっと昔あった見世物小屋にいく人って、怖いもの見たさだったり、面白半分だったりしたと思うんですね。そのことと、今の自分を取り巻く状況を重ねている部分はあります。僕は結構物事をシニカルな見方をする人間なので、こういう歌詞になりました。

――個人的に「アニメのような実写がいいな」って歌詞にグッときました(笑)。

久我:ありがとうございます(笑)。テレビや雑誌で偉大なアーティストを見た時に、3次元の人とは思えないようなスター性やキャラクター性を感じるんですよね。僕もそこを目指していきたいんですが、今はSNSとかありますし、ステージと客席が近くなってはきてると思うので、なかなか難しいですよね。

でも、みんなどこかでその3次元の人ではないスターを見ている感覚を、味わいたいと思ってると思うんですよ。だからそういう歌詞になったというか。

――久我さんはオーディエンスとしての自分と、ステージに立つ自分がまさに“シャム双生児”のように拮抗していて、だからこその視点をお持ちですね。

久我:そうですね。だからやっぱり見られ方とかこだわりますし、気にします。新しいものを発表した時とかも、お客さんの反応は気になりますよ。ミュージシャンなら誰でもそうなのかもしれませんが。

その反応によってショックを受けたり落ち込んだりはしませんが、考えることは多いですね。結構考えすぎるタイプではあると思います。家にひとりでいると考えなくていいことまで考えちゃったりとか(笑)。この間も事務所の社長に飲みながら色々と話させてもらって、「ライヴがないから、フラストレーションが溜まってるんだね……」って言われました(笑)。

――(笑)。特に最近は悩み多き時期、なのでしょうか?

久我:そうだなあ……。LIPHLICHって結成して6年なんですが、6年間ずっと僕がメインコンポーザーとしていろいろ先頭に立って続けてきて、今回の作品を完成させたところで、僕の中で表現したかったもののストックが、いったん全て「終わったな」って思ったんですよ。「LIPHLICHっぽい」って枠組みの中で僕が表現できることが完全に終わってしまったので、次の作品からは本当の意味で新しいことをしないと、って思ってて。

新たに何かを吸収するとか、時間をおいてじっくり練るとかしないともう良いものが生み出せないって感じたから、そういうフラストレーションも多分に含まれてるかも(笑)。この作品自体にはすごく満足してるんですけどね。

――そんな心境のなか、「MANIC PIXIE」を再録したことになにか意図があるのでしょうか? わかりやすく大幅なアレンジをしているというよりは、原曲の良さを生かした再録ですね。

久我:うーん、「MANIC PIXIE」ってLIPHLICHの代表曲なんですけど、だからこそ一回飽きちゃったんですよね(笑)。ライブの後半で毎回やっていて、おざなりになってしまった瞬間があり、「もうこれはやめよう!」って前回のツアーでは封印してたんです(笑)。

でもある時、知人に「それってさあ……、X JAPANのライヴで「X」やらなかったらどうするよ?」って言われたんです。「最悪ですね!」って(笑)。

――黒夢のライヴで「Like @ Angel」やらないみたいな(笑)。

久我:そうそれ!(笑) だから再録することでまた向き合えるんじゃないかなって思ったりとか。単純にメンバーが変わった(Dr.小林孝聡が2016年1月に加入)っていうのもありますしね。

あと、「MANIC PIXIE」って初期衝動的な部分があるんですが、こういう曲ってもう一度作ろうと思っても無理なんですよね。自然と定番曲になっていった曲だし。音に関しては、今ライブでやってるものをそのまま収録した感じです。