赤の女王の従者は何者? 描かれなかった裏設定

ジェームズ・ボビン監督 © 2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. 撮影・水田眞子

また、赤の女王の従者として登場する、野菜で形作られた人々にも注目です。

ジュゼッペ・アルチンボルドへのオマージュでしょうか? と聞いたところ、思わぬ設定を聞くことができました。

「その通りで、アルチンボルドは自分の大好きな画家なんだ。あの野菜たちは、映画の中では描かれていないけれど、タイムが赤の女王のために、人材として育ててあげたものなんだ。」

※ジュゼッペ・アルチンボルドは16世紀のイタリア・ミラノ出身の画家。果物、野菜、動植物、本などを寄せ集めた、個性的な肖像画の製作で知られる

完璧な悪役? 新キャラクターのタイムに注目

今作『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』は、アリスとマッドハッターたちだけの物語ではありません。

赤の女王と白の女王、そして赤の女王と、初登場となるヴィラン(悪役)タイムの、キャラクター同士の関係性が、多面的に描かれています。

ジェームズ・ボビン監督が「完璧なヴィラン」と表現するキャラクター、タイムですが、この優しさとも取れる一面を持つキャラクターが、なぜヴィランとして「完璧」なのか?

そこにジェームズ・ボビン監督の、ひいては『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』の価値観が、凝縮されていると感じました。

こちらも要注目です。

 

鑑賞前に知っておくと楽しい画家たち

また『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』には、赤の女王のお城の中に見られる、だまし絵で有名なマウリッツ・エッシャーのシュルレアリスムの要素や、キャスパー・デイビット・フレンドリッヒのロマンティックな風景表現など、様々な絵画作品からの影響が随所に盛り込まれています。

前作から引き継いだ世界に、こういった新たな創作のエッセンスが入る事で、アリスの世界らしい、ウンダーカンマー(驚異の部屋)のような、蠱惑的な魅力が加わったのではないでしょうか?

 

『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』は、多面的な物語、しかし万人に理解しやすい語り口は、見る人の世代や、おかれた環境によって、さまざまな世界をみせてくれます。

鑑賞後は、一緒に見た人と “お茶会” をして、意見を交わしていただきたい、そんな作品です。

ぜひ、劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか?

映画『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅
2016年7月1日(金)全国ロードショー

ジャングルクルーズの船長になりたいと夢見るデフレの申し子ライター。主にディズニー系記事を執筆しています。得意分野とは裏腹にバックボーンは耽美でダーク。かわいい服を眺めたり、ライブに行ったり、友人と映画を見るのが好きです。

「ディズニー特集 -ウレぴあ総研」更新情報が受け取れます