実力派女優4人が体当たりで描く“母と三姉妹”の愛憎劇、開幕

2016.7.8 15:55配信
舞台『母と惑星について、および自転する女たちの記録』 撮影:引地信彦 舞台『母と惑星について、および自転する女たちの記録』 撮影:引地信彦

蓬莱竜太作、栗山民也演出による舞台『母と惑星について、および自転する女たちの記録』が7日、PARCO劇場にて開幕した。今夏で一時休館となる劇場の最後の新作は、母親に対する三姉妹それぞれの記憶から、家族の在り方を問う愛憎劇だ。志田未来(三女・シオ役)、鈴木杏(次女・優役)、田畑智子(長女・美咲役)、斉藤由貴(母・峰子役)の実力派女優の競演で、“亡き母の遺骨とともに旅する三姉妹”の設定のもと、母と娘の葛藤の物語が展開する。初日前日に行われた最終舞台稽古での会見で、三姉妹を演じる女優陣は「母が観たらどう思うのか、気になる」と語り、斉藤からは「子どもが観たらショックを受けるかも(笑)」といった言葉が出たほどに、母娘の関係性に深く斬り込んだ衝撃の舞台が立ち上がった。

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三女シオの独白から始まった序盤では、異国を旅する三姉妹の珍道中が愉快に描かれる。訪れた国は、どうやら旅のひと月前に亡くなった母親が行きたがっていた場所らしい。だが母の遺骨を持ってきた理由は、けして穏やかな追慕だけではない。いまだ解けない怒りや悔恨の入り交じった感情で母を振り返る時、場面は過去の出来事へと転換する。現実の旅と過去の回想を繰り返すなかで、三姉妹は母へのわだかまりや受けた傷をお互いにぶつけ合い、今直面している苦悩、秘密を明らかにしていく。

父親不在の家で娘三人と実母を養ってきた母・峰子は、自らの欲望のままに奔放に生き、娘たちに厳しく当たる。斉藤は、娘を持つ母親とは思えない妖艶な美しさを振り撒きながら、その傍若無人なふるまいの中に、不器用な愛情を巧みに潜ませていく。“長女への期待”という呪縛に苦しみ、虚勢を張りながらも弱さ、粗忽さがこぼれ落ちる美咲。田畑は人間の脆さ、愛しさを表情豊かに、真摯に伝えてくる。優が抱える母との思い出は姉と妹ほどの深刻さはなく、どこか滑稽でもある。鈴木は軽妙な表現で緊迫した空気を救い、現実の悩みに前向きに立ち向かう姿で観客の共感を誘う。母との関係に一番こじれた根を生やしているのがシオだ。幼い頃は思いを口にできずに泣くばかりだったシオが、死の直前の母に対して、親子の立場が逆転したかのように激しい怒りをぶつける。ハッとさせられるほど険しい顔つきを見せた志田の、シオの成長を鮮やかに表出した力にうなる。

母への嫌悪が自らの恋愛、結婚を迷わせたと思い込み、「自分は普通の女じゃない」と悩む三姉妹。「母に似ている」という言葉で攻撃し合った姉ふたりが、いつしかその思い出を嬉しそうに語る姿に嫉妬するシオ。オンナたちの面倒臭い、こんがらがった感情は、身に覚えがあり過ぎて胸のうずく人も多いはずだ。そんな繊細なドラマを生み出した蓬莱の視点にあらためて驚嘆するとともに、生にもがく三姉妹への栗山の温かな眼差しを、敬虔な空気の漂う美しいラストシーンに痛感。演劇ファンに愛された劇場のラストを飾るにふさわしい、余韻をいつまでも留めておきたい秀作だ。

公演は7月31日(日)までPARCO劇場にて上演。その後、宮城、広島、福岡、大阪を周る。

取材・文:上野紀子

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