「カラペース」 「カラペース」 Photo Matt Beard Costumes Kym Barrett (c) 2014 Cirque du Soleil

2010年に初演、世界中で400万人以上を動員するシルク・ドゥ・ソレイユ『ダイハツ トーテム』大阪公演が、中之島ビッグトップで開幕した。「ボナセーラ、大阪!」と語りかける陽気なキャラクター・バレンティーノに観客も拍手で応えるなど、街中に出現したテントの中は大空間を感じさせない一体感に包まれた。

シルク・ドゥ・ソレイユ「ダイハツ トーテム」チケット情報

“人類の進化”をテーマに魚や両性類、類人猿などが登場し、驚異のアクロバットを繰り広げる本作。映像の魔術師と称されるロベール・ルパージュの演出により、プロジェクションマッピングを使って海や湖、火山島などをリアルに表現。可動式ブリッジの変化も圧巻、“生命の起源”の象徴である亀の甲羅のセットほか、大掛かりな舞台装置が生み出す幻想的な世界観にまず心奪われる。さらにプリミティブな響きがどこか懐かしい生演奏や歌、750着もの独創的な衣装、それを着こなすパフォーマーの豊かな表情。カエルはペロペロと舌を出し、カップルはすごい技を見せながらも恍惚とした表情を浮かべる。どこをとっても目が離せないシルク・ドゥ・ソレイユ(以下、シルク)ならではの芸術的な世界が、演劇的にも緻密に進化していた。

カエルたちが鉄棒から鉄棒へ宙を舞う「カラペース」から客席の目は釘付け。男女3人が愛の駆け引きを見せる「リングス・トリオ」。吊り輪を大きく揺らし、客席の頭上まで飛ぶパフォーマンスに歓声が。この女性といい美男美女揃いなのも観ていてワクワクする。携帯片手のビジネスマンは猿人たちに服をはぎとられ、肉体美を見せながら棒の上で驚異のバランス。猿人は彼を挑発、これは覇権をかけた戦いなのだ。

高いブランコの上でカップルが淡い恋模様を演じる「フィックスト・トラピス・デュオ」は、空中バランスをする女性の頭を男性が腕一本で支えるといった難技を次々と披露。少女たちが高さ2mの一輪車に乗りながら、金属製カップを足で蹴って互いの頭上へと乗せてゆく「ユニサイクル・ウィズ・ボウル」も目を見張る。“人類の進化”は科学や文明にまで及び、サイエンティストが七色に光るボールでジャグリング。色彩的にも美しく子どもの脳裏に焼き付くはず。

直径1.8mの台座の上で、男女が超高速回転&旋回を見せる「ローラー・スケート」は人間技とは思えない域。愛の無限さをこの力強い旋回で表現。ふたりの絆が表情からも伝わりウットリする。宇宙飛行士たちが幅たった11cmの長いバーからバーへと宙返りしながら跳び移る「ロシアン・バー」。究極の精神統一が必要な瞬間を観客は息をのんで見守り、成功すると拍手喝采! このライブ感は祝祭的なフィナーレで頂点を迎える。人類の起源から未来まで数億年を旅する、“愛”と“調和”に溢れたドラマティックなシルク。夢のような2時間だ。

公演は、10月12日(水)まで中之島ビッグトップにて開催中。その後、11月10日(木)から2017年1月15日(日)まで名古屋ビッグトップ、2月より福岡ビッグトップ、4月より仙台ビッグトップにて開催予定。大阪、名古屋公演のチケットは発売中。

取材・文:小野寺亜紀

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