正倉院正倉

天皇陛下の御即位を記念し、正倉院宝物と法隆寺献納宝物を一挙公開する特別展「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」が、東京国立博物館で、11月24日(日)(前期:~11月4日(月・休)、後期:11月6日(水)~)まで開催されている。

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正倉院宝物とは、奈良・東大寺にある正倉院で守られてきた文化財で、光明皇后が聖武天皇の御遺愛品を東大寺大仏に捧げたことに由来する。会場の第1章“聖武天皇と光明皇后ゆかりの宝物”では、15メートルもの長大な献納時の目録「東大寺献物帳(国家珍宝帳)」(前期)を展示。その巻末に記された光明皇后の言葉から、聖武天皇への深い愛情を感じることが出来る。また琥珀や螺鈿、トルコ石を贅沢に使用した、宝飾鏡の代表作「平螺鈿背八角鏡」(後期)も必見。

第2章“華麗なる染織美術”では、伝世品としては世界最古の染織品と言われる名品の数々を展示。出土品ではなく、蔵である正倉院で守られてきたからこその文化財だと言える。第3章“名香の世界”では、正倉院を代表する香木「黄熟香(蘭奢待、らんじゃたい)」(通期)を紹介。そのふくよかな香りは足利義政や織田信長をも魅了し、彼らが切り取ったとされる箇所には今も印も残る。

第4章“正倉院の琵琶”には、その名の通り正倉院の顔とも言える「螺鈿紫檀五絃琵琶」(前期)が鎮座。古代インドに起源を持つ五絃琵琶だが、現存するのは世界でこれだけと言われる貴重な一品だ。撥を受ける部分にはラクダに乗って琵琶を演奏する人物が、裏には宝相華(ほうそうげ=浄土の世界に咲くとされる空想上の花)の文様が螺鈿と玳瑁(たいまい=ウミガメの甲羅)、べっ甲によって装飾されている。また楽器としての機能と構造を明らかにするため、正倉院では8年をかけて本作の模造を製作。そちらも同時展示されている。

第5章“工芸美の共演”では、7世紀美術を代表する法隆寺献納宝物と、8世紀美術を代表する正倉院宝物から、それぞれ同じ用途で製作されたふたつの宝物を同時展示。「伎楽面 酔胡王」(ともに前期)などから、時代による変化や特徴を垣間見ることが出来る。さらに模造品では、当時の鮮やかな色彩を楽しむことも。ラストを飾る第6章“宝物をまもる”では、1260年以上の長きに渡り、正倉院宝物がいかに守られてきたのか。その保存・修理・模造の取り組みを紹介。また三倉からなる正倉院正倉の中倉、南倉の一部が原寸大で再現されており、こちらは撮影も可能だ。

取材・文:野上瑠美子