子どもの器を大きくする2つのステップ

器、つまり自己肯定感は、3つの要素から成り立っている、と天野さん。それは、

1)呼吸や睡眠によって、身体を健康に保つ働きをする「脳幹」

2)心をつかさどり感情を育む「大脳辺縁系」

3)考える、記憶するなど、脳の高次機能をつかさどる「大脳(皮質)」

です。

このうち、子どもが身につけるべき知識や情報、社会のルール、他者とのコミュニケーションなどは、(3)の大脳(皮質)にあたり、器のたとえで言うと、中にたまる水です。

一方、たくさん水をためておける大きくて丈夫な器を作っているのが、(1)脳幹と(2)大脳辺縁系。自己肯定感の強い子どもを育てるためには、知識や社会ルールを教えるよりもまず、この2つのステップを踏むことが先決だといいます。

さらにショッキングなことには、10歳までに器の成長はほぼ決まってしまい、その後はこの成長が緩やかになってしまうというのです。

器がないのに水を入れると……?

天野さんのこの主張に、筆者も思い当たることがありました。

筆者自身、3歳の男の子を育てる母です。まだ「会話」という段階ではありませんが、それでも「お友達との物の貸し借り」や「順番を守って遊ぶ」といった社会のルールを学ばせなければなりません。

「おもちゃを借りたいときには『貸して』というんだよ」「〇〇ちゃんが先に遊んでいたから、順番ね」

何度、そんな言葉をかけたでしょうか。それでも、子どもにそんな言葉はまったく伝わらず、しまいには「何度言ったらわかるの!」と自分がイライラ、ヘトヘト。

こうした言葉は、天野さんの指摘する“水”の部分だったのです。しっかりとした器を作る前に水をジャブジャブと流し込んでも、一向にたまらないはずです。

会話も同じ。「自分は、自分のままで大丈夫。愛されている」、そう感じられれば、安心して自分の意見や考えを伝えたり、相手の思いをくみ取ったりと、上手にコミュニケーションを取れるようになっていくといいます。

コツは「身体を育み、心を育む」

器を構成する2つの要素のうち、「脳幹」は身体を健康に保つ働きを持っています。これがすべての基礎。呼吸、睡眠といった生活リズムを整え、身体を健やかに保ちます。

もう一つ「大脳辺縁系」は心の働き。親に認められていると実感することによって発達します。そのために重要なのが、親の「認める言葉がけ」です。