北翔海莉

海の上で生きたピアニスト──。映画にもなったイタリア文学『海の上のピアニスト』を、ピアノ・朗読・芝居による音楽ドラマにした舞台が熱望の声を受け再演する。天才ピアニスト・ノヴェチェントを演じる北翔海莉は「またあのピアノが聴ける。あの空間に行けると思うと嬉しい」と喜びを語った。

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初演は3日間のみの公演だった。「前回は稽古と本番を合わせても短期間で、不思議なピアノの空間のなかで夢を見ているうちに終わっちゃった感覚でした。でも今回はしっかり稽古できるし、演出やキャストにも変化があり、また違った舞台になります」

親友のトランぺッター役がいくつかの登場人物を演じ、ノヴェチェントの物語を語るという構成になる。北翔にとってはほぼ一人芝居だ。そのぶん、ノヴェチェント自身である北翔と、彼の音楽を奏でるピアノ・大井健の関係が濃くなり、表裏一体のような存在として際立つ。「大井さんと私はニコイチ。ふたりでひとりの人間を演じます」

また、会場によって出演者や美術セットが異なる。トランぺッター役は、博多・京都公演では中村匡宏が、東京公演では喜多村緑郎が担う。「人が変わると同じ台本とは思えない。中村さんは大井さんと『鍵盤男子』というデュオを組んでいて、積み重ねてきた信頼関係があり、ピタッと合うんです。ひとりとふたりではアレンジも変わるので、ノヴェチェントの台詞にあるように“奏でられる音楽って無限なんだな”と実感します。喜多村さんは初演でもご一緒していて、なにより安心できる役者さん。信頼して懐に飛び込んでいます」。中村、喜多村、それぞれ台詞の端々まで違うというのも、キャストが変わる面白味だ。朗読と大井とのピアノの連打が見どころの音楽バージョン、喜多村の芝居部分がブラッシュアップされる芝居バージョンの違いが興味深い。

当初、男性のノヴェチェントを演じることに疑問もあった北翔。「彼は陸に降りたことがない。男でも女でもないピュアな心の持ち主なので、性別が偏らないように演じることに意味があるんだと腑に落ちました」。

音楽に乗せて、天才ピアニストの一生が語られていく。「ジャズ、子守唄……曲のジャンルが全部違っていて、歩んできた人生をちゃんと表現できる音楽なんです。作曲家の中村さんが天才!(笑)どの曲も好きなのですが、ノヴェチェントが8歳の時と大人になった時で、同じ曲を歌うんです。歳を重ねても、純粋でウブで無垢な目の奥の輝きが同じままで歌うことを大切にしたいです」

公演は11月13日(水)・14日(木)・15日(金)東京・東京芸術センター 天空劇場にて。

取材・文:河野桃子

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