漫画の土台にしやすい人物、事柄、時代があります。このレポートで最初に取り上げた織田信長もその1人ですし、日本史で言えば戦国時代と幕末(江戸時代末)が圧倒的でしょう。知られた人物を取り上げれば、人目を引くことでファンを得やすく、余計な説明をする手間が少なくなります。もっとも詳しい人が多いだけに、綿密な時代考証なども必要になるのですが、そこは漫画と言うことで、ごまかしも可能かなと。

中国史で言えば、横山光輝の『三国史』に代表されるように、断トツに三国時代です。長く続いた漢が崩壊、やがて曹操の魏、孫権の呉、劉備の蜀の3国に収束、しかしそのいずれもが歴史の間に消えて、晋が中国を統一。その過程において、特徴ある武人や文官も多く輩出されています。人気があるのは蜀の孔明か劉備、そして義兄弟となった関羽、張飛でしょうか。ただ『蒼天航路』(原作・原案:李學仁、 漫画:王欣太)の影響か、魏の曹操をはじめ、夏侯惇、張遼あたりも人気があります。また呉の孫堅、孫策、周瑜も外せないところでしょう。ただ知名度があるのは痛し痒しの一面もあります。1000年以上の時を越えて、自分達が巨乳女子高生になったり、可愛い女の子になったりしているとは、さすがの英傑たちも考えつかないでしょう。

そんな中国史ですが、英雄や豪傑が活躍したのは、三国時代だけではありません。むしろどの時代でも何がしかの混乱が起き、多かれ少なかれ武人、文人が活躍していたとも言えます。三国時代にさかのぼること約500年が春秋戦国時代で、この時代も混乱の極みにありました。そこを舞台とした漫画が、集英社の「週刊ヤングジャンプ」で好評連載中の『キングダム』(原泰久)です。

春秋戦国時代も長きに渡るのですが、漫画に描かれているのは秦によって統一が図られようとしている末期。その時代に活躍した将軍の李信(漫画では信)が主人公になっています。孤児で使用人に過ぎなかった信ですが、混乱の時代に当たり前のように起きる戦争に参加し、手柄を立てていくことで次第に出世していきます。その根底にあるのは、若くして身代わりに亡くなった幼馴染みとの約束であり、幼馴染みが身代わりとなった生かした秦王の政との信頼関係です。