一人では厳しいが、賛同してくれる方が集まればできるかもしれない

障がいのある男の子にiPadで漫画を読ませてあげたときのことを語る奥村さん 撮影:小林裕和

——まばたきを検知するアプリということですが、普段から人間はまばたきをしています。無意識のうちのまばたきで、まだページをめくる段階ではないのにページが飛んでしまうということにはならないのでしょうか?

奥村:そこは、長いまばたきだったり、何秒以内のまばたき、長いまばたきと短いまばたきの組み合わせだったりと、パターンをいくつか作って設定する予定です。テレビのリモコンくらいの種類のパターンを作ろうと、開発していただく会社と打ち合わせている段階です。

——奥村さんのブログを拝見させていただくと、当初、アプリの開発をとある会社に見積もってもらったところ2,000万円もかかると言われたそうですが、そこからどのようにしてクラウドファウンディングで資金を集める方法に辿り着いたのでしょうか?

奥村:当初問い合わせて見積もってもらった会社は法人を相手にする企業だったので、2,000万円もかかると言われたんです。でも、いくつかの会社を一括で見積もれるサイトを利用して見積もってもらい、その中で、300万円以内で引き受けられますという会社に出会いました。その会社と打ち合わせたら、ぜひやりましょうということになったんです。

クラウドファウンディングについては、以前、病院のない沖縄の離島で病人が出た際に輸送できるヘリコプターを配備するプロジェクトの資金集めでクラウドファウンディングを利用したというニュースを見たことがありました。

そこで、自分一人で資金を集めるのは厳しいけど、このプロジェクトに賛同してくれる人の支援が集まればできるのではないかと思い、クラウドファウンディングという手法をとりました。

アプリの開発自体にかかるお金は217万円なので、その一部の180万円をクラウドファウンディングで集めようと進めています。

——現在(7月29日の取材時点)16名の支援者がいるようですが、これはバンド時代のファンが多いんですか?

奥村:いえ、元ファンの子たちはあまりいないですね。やっぱり、結局は共感を持ってくれる方しかお金を出してくれないので。

地元でもプロジェクトの認知度を上げたい

奥村祐司さん 撮影:小林裕和

——クラウドファウンディングは支援してくれた方にリターンがありますよね。このプロジェクトのリターンはお菓子かアロマオイルとのことですが、この商品をリターンに選んだ理由は何ですか?

奥村:和歌山県出身なので、和歌山の名産品にしたんです。鈴焼きというカステラのようなお菓子のセットと、和歌山県熊野産の森の香りのアロマオイルのセット、どちらかを選べます。こちらは、支援してくださった方に自腹でお礼としてお送りいたします。

——この活動を知ってもらうために、何かやっていることはありますか?

奥村:今はTwitterで何度もツイートしています。また、今後はチラシを作って障がい者施設に置いてもらう予定です。まだ資金がたまっていない状態でチラシを作っても、置いてくれないところが多いということで、もう少し資金がたまったら作る予定です。

また、地元である和歌山県にレモネードカフェというカフェがあります。生前、X JAPANのhideさんが、障がいのある子どもたちを元気づける活動をしていたのは有名ですよね。そのレモネードカフェのオーナーさんのお子さんも、hideさんが応援していた障がいのある子の一人なんです。残念ながら、その子は亡くなってしまったのですが、その子のお母さんは今でも音楽と福祉活動に力を入れています。

レモネードカフェはライブもできるようになっており、障がいで片手がないため、義手を付けてギターを弾いている方もいるそうです。その方も、譜面をめくれないというので、その方のためにも、アプリが開発できたらと思いますね。

お盆には実家に帰る予定です。まだ、直接はレモネードカフェにアポをとっていないのですが、帰省した際にこのプロジェクトについてお話し、チラシを置かせてもらえればと思っています。