奥村寿(本名・奥村祐司)さん/ 撮影:小林裕和
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  • 奥村祐司さん 撮影:小林裕和
  • 奥村祐司さん 撮影:小林裕和
  • 奥村祐司さん 撮影:小林裕和
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  • 奥村祐司さん 撮影:小林裕和

2016年6月2日に解散したアプレスエコール。そのギターの奥村寿(本名・奥村祐司)さんが、障がい者支援のプロジェクトを7月19日から開始しました。

このプロジェクは、筋ジストロフィーや多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの病気で体を動かせない人でも、まばたきの検知により他人の手を借りることなく、自分のペースで読書ができるアプリの開発です。

現在、奥村さんはクラウドファウンディングにより、このアプリ開発のための資金を集めている最中です。目標額は90日間で180万円。奥村さんにプロジェクトの詳しいお話を聞きました。

病気の人の役に立ちたい

——元ヴィジュアル系バンドマンが福祉活動をするとは、あまりイメージがつかない人も多いと思います。今回、奥村さんがまばたき検知で本が読めるアプリの開発をしようと決めたきっかけは何ですか?

奥村祐司さん(以下、奥村):一番大きいのは、数年前、弟が多発性硬化症という病気にかかってしまったことです。症状にはいくつかパターンがあるのですが、脳の神経がやられると、まずは歩けなくなり、次に手が動かなくなる、しゃべれなくなり、呼吸もできなくなり、最終的には目しか動かせなくなり、やがて心臓も止まって、亡くなってしまいます。どんどん体が動かなくなり、最後は目の動きのみなので、まばたきを応用できたら、体の不自由な人でも読書ができると思ったんです。

もし、自分が体が動かせない病気になったら、何もできることがなくて暇だろうなと思ったんです。だから、体が動かない人でも誰かの手を借りずに本が読めたらと。

また、もう一つのきっかけは、アルバイトで障がい者施設の水道メーターの回収・分解をやっていたので、その施設に入所している病気の方たちの役に立てたらいいなと思ったんです。

そして、直接はこの企画と関係ないですが、音楽活動でスタジオ練習に入った際、演奏中は両手が塞がってしまうため、タイミングよく譜面をめくれないんです。まばたき検知で譜面をめくれたら、障がい者だけでなく、多くの人の役に立つのではないかとも思っています。

——このプロジェクトを思いついたのはいつ頃ですか?

奥村:アイディアが浮かんだのは昨年の年末くらいです。でも、現役でバンド活動をしている際にプロジェクトを開始すると、売名行為だとか良い奴ぶっているとか言われるのかなと気になり、バンドが解散したのをきっかけに始動させました。

このクラウドファウンディングのページに載っている障がい者の男の子との写真は、バンドが解散して一週間後に撮ったものです。

アイディアを思いつくのは得意だが、行動に移すのが苦手だったので、今回こそやりたいと思った

奥村祐司さん 撮影:小林裕和

——バンドが解散してからすぐに動いたんですね。アイディアを思いつくことはあっても、実際に行動に移すのは難しいことだと思います。何か、後押しなどはあったのでしょうか?

奥村:元々、何かを思いつくのは得意なんです。アプレスエコールは当初、漫画家さんとコラボし、漫画から飛び出したバンドというコンセプトで活動していましたが、漫画家さんとのコラボは僕のアイディアです。そして、ボーカルが『りぼん』で活躍している漫画家さんを見つけてきてくれました。

普段から、何かアイディアを思いついたらメモをしているのですが、もっと、何かをやりたい、何かを残したいと思ったんです。それに、今まで何も行動に移してこなかった罪悪感というか、自分のダメな部分があったので、今度こそやってみたいと思って。

でも、一人では無理だと思い、音楽仲間のピアニストに相談すると、話にのってくれたので、その人と一緒にスタートさせました。

——クラウドファウンディングのページにある、障がいのある男の子とのツーショット写真は、奥村さんが実際にアルバイトで通われていた施設に入所している子ですか?

奥村:いえ。この活動をするにあたり、ページに写真を載せるために11軒の施設に問い合わせたのですが、患者さんのプライバシーにあたることを理由にほとんど断られました。この写真は、とある施設に勤める方の息子さんです。息子さんが障がい者ということで、「うちの子で良かったら」と写真を撮らせてもらえました。

——すごい。10軒も断られた末、ようやく撮影できたものなんですね。写真の男の子はiPadで漫画を読んでいますが、これは試作品ですか?

奥村:まだ試作品の段階ではないので、これはただ、僕が漫画のページをめくってあげているだけです。でも、すごく楽しそうにしていますよね。