写真左から、石橋杏実、岡村美南 写真左から、石橋杏実、岡村美南

2019年1月に初演を迎えた劇団四季の新作ミュージカル『パリのアメリカ人』が、来年2月22日(土)より京都劇場で上演される。米国ミュージカル界の巨匠ジョージ&アイラ・ガーシュウィンの流麗で洒落た音楽に乗って、クラシックバレエを中心に、ジャズやタップ、コンテンポラリーダンスなどが展開する力作だ。関西初となる公演に向け、出演候補の石橋杏実と岡村美南に話を聞いた。

劇団四季「パリのアメリカ人」チケット情報

1951年に公開されたジーン・ケリー主演の同名映画に着想を得て舞台化された本作は、2014年パリで初演の後、翌年ブロードウェイに進出。トニー賞振付賞、装置デザイン賞など4部門を獲得し、話題となった。第二次世界大戦直後のパリを舞台に、画家を志す米国の退役軍人ジェリーと、バレリーナを夢見るリズとの恋物語。映画版と異なるのは、ジェリーのパトロンの大富豪マイロや、作曲家志望のアダムら脇を固めるキャラクターにもより光をあてていることだ。ジェリーらが戦後の闇から希望を見出す様をピアノや自転車を使い、躍動的にリズムを刻む『アイ・ガット・リズム』、マイロが情熱的にジェリーをダンスに誘う『シャル・ウィ・ダンス』など、どのシーンも見ごたえがある。

3歳からバレエを始め、2015年に劇団四季に入団、本作で初めてヒロインのひとりに抜擢された石橋は「こんなにバレエが盛り込まれた作品に出演できるのは光栄です。ダンス、衣裳、セットが華やかなのはもちろんですが、一番濃厚なのは物語。戦争を経験した若者たちがどうやってそれを乗り越え、生きる糧を見つけていくかが作品の魅力です」と話す。一方、ガーシュウィンの人気作『クレイジー・フォー・ユー』にも出演経験のある岡村は、マイロ役のひとり。「世代を超えて愛される彼らの音楽が堪能できます。また、バレエ界で有名なクリストファー・ウィールドンさんの、ダンスから言葉が聞こえてくるような振付が素晴らしい。舞台転換もダンスのひとつで、道具も踊るように見えます」と言う。

ハイライトは14分間をダンスのみで綴る『パリのアメリカ人』だ。石橋は「リズの心情を大切に踊っています。人生や恋愛に不安を抱えていた少女が、ダンスを通して自由になり、バレリーナの大人の女性へと成長する。そこを見せられるように、動作ひとつひとつを鏡で研究しました」と力を込める。岡村も「そのシーンで私の出演はないのですが、舞台の袖で一緒に踊っています(笑)。ジェリーやアダムら登場人物のいろんな物語がこの場面で融合する。ストーリー重視の“踊りじゃない踊り”が楽しめます」と絶賛する。

ジェリーの描くスケッチが舞台上に現れたかのようにプロジェクションマッピングで投影され、俳優を含め舞台全体が抽象画家・モンドリアンの絵のようになるシーンにはため息がもれる。「繊細さにこだわり、アンサンブルのひとりひとりも輝いているのが四季ならでは」と石橋。ぜひ、劇場で体感してほしい。公演は2020年2月22日(土)から5月17日(日)、京都劇場にて。チケットは11月17日(日)一般発売。

取材・文:米満ゆうこ