●バランスの良い選曲
若手~中堅の実力のあるロックバンドを中心に、ベテラン勢をバランスよく挟んだラインナップ。発売元のビクターエンタテインメント所属アーティストに加え、レコード会社の枠を超えてバラエティ豊かな面々が集められていて、音楽好きのアンテナに絶妙に引っかかる、なかなかにいい線をついている。またコンピのクオリティを決定づける曲順も、前作に引き続き大変すばらしい。特にラストに向かう七尾旅人~フラカン~おおはた雄一の流れなんかは、ちょっとほかでは聴けないものだ。まあこれはどのコンピ盤にも共通して求められる必須要素なのだが、そこを着実にクリアしている。

●“隠れた名曲”が多い
そんな幅広いラインナップということで、当然すべてアーティストの楽曲を聴いたことがある人は、ほとんどいないと思う。むしろそういう人にこそ聴いてほしいのが本作なのだ。というのも今回選曲されているのは、誰もが知っているシングル曲よりも、アルバム収録曲などいわゆる“隠れた名曲”が多い。「最近気になってるあのバンド、有名なシングルは知ってるけど、ちゃんと聴くキッカケがない」なんて人には、格好の出会いのチャンスになると思う。そういう意味で、誰もが知っている有名曲ばかりを網羅したベストヒット的コンピ盤に比べると、若干購入のハードルは高めに思えるかもしれないが、言い換えれば、音楽的好奇心の強い人にとっては最適の内容と言えるだろう。

●「東京しばり」が生む独自性
このコンピの強みはなんと言っても「東京しばり」というコンセプトを生み出したこと。これは本当に画期的。今や東京が日本の中心と言い切るのも微妙な世の中になってはいるが、ミュージシャン(特にロック系)にとって東京という街は、昔も今もさまざまな情景をたたえた特別な場所なのだということが、本作を聴くとよくわかる。ただ“東京”というモチーフに対する思い入れの濃度としては、前作のほうがより濃いめだった気もする。今回は選曲の幅が広がったこともあり、より多様性をもった“東京”の姿が浮かび上がってくるのが面白い(前作にはなかったインストナンバーも収録している。BLACK BOTTOM BRASS BANDの名曲!)。