シュリスペイロフ シュリスペイロフ

1999年に札幌で結成された超個性派バンド、シュリスペイロフが6thアルバム『あまりかぜ』を8月10日(水)にリリースする。作詞、作曲、ボーカル、ギターを務めるフロントマンの宮本英一に話を訊いた。

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シュリスペイロフは2013年から東京に拠点を移し、the pillowsの山中さわおが主宰する「DELICIOUS LABEL」に移籍。それ以来リリースはハイペースに。「レコーディングするスタジオにも慣れてきて音に関しては作りやすかった。前作(2015年5月発売の『その周辺』)の音を聴いて“もう少しこうした方がいいかな”とか見えていたので、今回はいいものができると」

届けられた10曲は、緊張感に溢れたオルタナティブ・ロックから叙情的で文学的なナンバーまで表情豊か。「アルバムを見据えて曲を作るというよりは作りたいものを作って、自分にできるものを信じてやってみようと。結果的には今まで通りダークな曲もあれば明るい曲もあって、アルバム全体のバランスは取れてるかなと思います」

演奏力には以前から定評のある彼らだが、アレンジの細部にもこだわりと自由度が共存するサウンドは実に気持ちよく、聴くたびに新たな発見もある。「アルバムの最後に収録した『やすもの』は、ブチョー(ds)、野口(寛喜)(b)に“あまり練習しないで来てほしい”と言って。可愛くしたかったんですよね。バタバタと、あえて下手な感じも面白いかなと」。『やすもの』は彼らなりのバンド観を示した歌詞も秀逸。「“バンドがいい状態だぜ”っていうのもあるし、年齢的に30代後半になって音楽だけで生活できてないことに対する強がりと、“だけど楽しいぜ”という複雑なバンドへの愛情が出てる感じですよね(笑)」

本作で収録された『まともになれない』に代表される、カッコよくない生き方を描く曲も彼らならではのオリジナリティだ。宮本の書く曲には唯一無二の風格が漂う。「自分のあんまりよくないところとかダメな部分も愛でてやるという感じです。自分の作家性をもうちょっと信頼したいという気持ち、“レーベルのさわおさんがいいと言ってくれるから”ではなく、バンドを始めたときに感じてた“根拠のない自信”みたいな気持ちを取り戻したいというか。それが自然体であり、バンドもそんな僕のモードに普通に合わせてくれたのも楽しかったです」

アルバムリリースに伴うインストアイベントやツアーも決定しているので、彼らの奥深い音世界をどっぷり体感してみては。

取材・文:浅野保志(ぴあ)