(画像左から)板垣恭一、紺野まひる、壮一帆、一路真輝 撮影:源賀津己 (画像左から)板垣恭一、紺野まひる、壮一帆、一路真輝 撮影:源賀津己

11月に上演されるアラン・エイクボーン作のコメディー『扉の向こう側』で、宝塚歌劇団雪組の歴代男役・娘役トップスター3人が顔を揃える。ホテルのスイートルームに呼び出され、見知らぬ実業家から「二人の妻を殺した」という告白文の証人になってくれるよう頼まれる娼婦のフィービー。逃げ出そうとして隣の部屋に繋がる扉を開けると、そこにはとっくの昔に死んだはずの妻たちが…!? 三つの年代を行き来しながら進むタイムワープものだが、演出の板垣恭一が「大胆な仕掛けを決して安っぽくない形で使った、とてもとても面白い戯曲」と惚れ込む傑作だ。

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フィービーを演じるのは、宝塚を退団後、これが3作目の舞台となる壮一帆。「1作目で男役、2作目で性別のない役を演じ、やっと女性の役が来たと思ったらSMクイーン役(笑)。普段使わない言葉が並ぶ台詞の中で、壮一帆の人となりをどれだけ出せるかがテーマです」と新たな挑戦に意欲を燃やす。タイムワープ先の40年前の世界に生きる、最初の妻ジェシカ役の紺野まひるは、「舞台は6年ぶりなので緊張します。見た目も内面も、90年代っぽい雰囲気を出して演じられたら」。そして20年前の世界=現代に生きる二番目の妻ルエラ役の一路真輝は、「この3人で良かったと言われる舞台にしたい」と意気込みを語った。

この3人、壮と紺野は同期だが、二人が一路と本格的に共演するのは今回が初めて。だが現場には、とてもそうは思えない和やかな空気が漂っていた。役に対する不安を覗かせる壮に、「未来のSMクイーンなんだから何でもアリなんじゃない?」と一路が言えば、「それもそうですね。じゃあ触覚とかつけましょうか(笑)」(壮)、「楽しくなってきた!」(紺野)と二人が乗っかって大盛り上がり。また、一路が「私、出ハケが苦手で色々やらかすと思うからよろしくね」と意外な告白をすると、壮が「この中ではまひるがいちばんしっかりしてると思う」、紺野が「いえ、私もそう見えるだけで、私生活なんてハチャメチャです(笑)」とパスを回し、最後には「みんなで力を合わせて頑張りましょう」という何とも平和なゴールを決めるひと幕も。

この空気感は、今回の舞台にも生きてくるのでは、と一路は分析する。「歌劇団出身の方とご一緒すると、在籍した時代が違っても、不思議な共通意識が流れているのを感じるんです。物語の中の3人も、同じ男性を知っているという共通点からか、初対面なのにすぐに理解し合って協力するようになる。そういう意味でも、非常にいいメンバーだと思います」。一路の言葉に、壮と紺野、そして板垣も深く頷いていた。

『扉の向こう側』は11月11日(金)兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールより開幕。その後、東京、愛知を周る。なお、現在チケットぴあでは東京・愛知公演の先行抽選受付中。兵庫公演発売中。

取材・文:町田麻子