2018年12月に「PayPay」が実施した「100億円あげちゃうキャンペーン」を号砲に一気に動き出したスマートフォン決済サービス。あの熱狂から1年、家電量販の中でも同キャンペーンの激震地となりスマホ決済で先頭を走るビックカメラの店頭はどう変わったのか。インバウンド(訪日外国人旅行客)に根強い人気の大阪・なんばの「ビックカメラ なんば店」の山田洋樹店長代理に話を聞いた。

レジに入るのは怖くない?

レジ周りのパネルを見れば、ビックカメラがこの1年で急速にキャッシュレス対応に舵を切ったことは一目瞭然だ。もともと各種クレジットカード(クレカ)やビックカメラグループのクレカのほか、Suicaなどの交通系やiD、QUICPay、nanaco、WAONなどの電子マネー決済に積極的に対応していた。17年4月に仮想通貨ビットコイン決済に対応して話題になったのも、今となっては懐かしいくらいだ。

これにスマホ決済の楽天ペイ、Origami Pay、LINE Pay、PayPay、d払い、au PAY、WeChatペイ、Alipay、NAVER Payなどに対応する。あまりに対応する決済手段が多すぎて、レジに入るのが怖くなったりしないのだろうか。

山田店長代理は「キャッシュレスだとお客様を待たせずに済むし、店舗側の作業効率も上がる」と双方にメリットがあると語る。本部のほうでも、比較的早くマルチ対応のバーコード読込システムを導入にした。

スマホ決済導入初期のころ(といってもわずか1年前のことだが)は、QRコードを読み込んで金額を入力し、店員と顧客が確認しながら決済する仕組みだったが、今はバーコード端末が、さまざまな決済手段に対応する。

レジにあるのはスマホ決済用のバーコード読取端末と非接触化型のFelica端末、クレカ用端末の三つだけ。このいずれかを使えば事が足りる仕組みなっている。

スマホ決済では、12月15日まで実施中のJCBの20%キャッシュバックキャンペーンが強烈なインパクトを与えているが、そのほかのスマホ決済も通常のポイントに、ビックカメラの8%ポイントを加えることでお得感を演出している。展示の仕方も整理されていて分かりやすい。このパネルをレジで見てしまうと、現金で支払うと損する気になるというのが顧客の心理ではないだろうか。

「キャッシュレス相談カウンター」でフォロー

スマホ決済を始めてみたいと思った顧客に対して、1階に設けた「キャッシュレス相談カウンター」が受け皿となる。総合案内カウンターの川北健吾さんは「使ってみたいけど、使い方が分からないというお客様が相談に来て、多いときは10人以上になる」と語る。相談の内容は「クレカとスマホ決済が半々くらい」ということで、スマホ決済だけでなく2枚のクレカを1枚にまとめたいなどの相談もあるという。

観光で訪れる外国人客の相談も多い。こちらは買いたい商品がどの売り場にあるかなどを尋ねられるケースが多い。「外国の方は、そもそもほとんどかキャッシュレス決済。現金での支払いはごくわずか」と川北さんが語るように、キャッシュレス決済に関する相談は少ない。アジアからの客はWeChatペイやAlipay、銀聯カードがほとんどだ。

11月18日にヤフーとLINEの経営統合が発表され、PayPayとLINE Payの行方がどうなるかなど、スマホ決済の動向は常に流動的だ。もう少し落ち着いてから導入すればいいと考える経営者もいるかもしれないが、まずはいち早く対応し、動きながらブラシュアップしていく。そんなビックカメラらしさが、レジ周辺の雰囲気からも伝わってきた。

来年の東京五輪の開催や大阪では2025年の大阪万博も決まった。インバウンド対応という視点からも小売りのキャッシュレス決済対応はますます進んでいくだろう。(BCN・細田 立圭志)

「ウレぴあ総研」更新情報が受け取れます