初心者にオススメの300~330WクラスのUPSを比較

雷や豪雨、台風、地震、ブレーカー落ち……。停電はさまざまなきっかけで発生する。停電すると使用中の家電の電源が突然落ちてしまう。なかでもPC、外付けHDD、NAS(ネットワークHDD)、BDレコーダーなどストレージを搭載しデータを保存している機器は突然の停電により、作業中のデータが消えてしまったり、データが壊れてしまったりすることがある。そんな緊急事態の“転ばぬ先の杖”として用意したいのがUPSだ。

UPSは、停電などでコンセントからの電力供給が途絶えた後、接続機器に一定の時間、電力を供給することができる電源装置だ。UPSから電力を供給している間にシャットダウンを行えば、データを損なうことなく、安全に電源を落とすことができる。また、スケジュールシャットダウン機能を備えたモデルであれば、接続したPCを自動的にシャットダウンするので便利だ。

売れ筋の最大容量は300Wと330W、人気の3モデルを比較

急な停電に備えてUPSを購入しようと思った時、どのぐらいのスペックのUPSが必要か分からない人も多いだろう。UPSを選ぶポイントは電源容量だ。家電量販店の実売データを集計する「BCNランキング」で、売れ筋の最大容量(W)を調べたところ、販売台数シェアでは300Wが25.4%で1位、330Wが24.8%で2位、500Wが10.2%で3位だった。つまり、300W、330Wで市場の半数を占めることが分かった。

この容量クラスであれば、デスクトップPC一台に無線LANルーター、モデムなどの通信機器、それにNASやスマホ/タブレットなど、4~5台の電源供給が可能だ。初めてUPSを導入する人のお薦めだ。このクラスの製品は各社から出ている。今回はメーカーシェアランキング上位のシュナイダーエレクトロニック、オムロン、サイバーパワー・ジャパンの300~330Wの製品を比較した。

比較モデルはシュナイダーの「BR550G-JP」、オムロンの「BY50S」、サイバーパワーの「CPJ500」で、容量は「BY50S」「CPJ500」が300W/500VA、「BR550G-JP」が330W/550VAだ。

容量の次は出力コンセント数をチェックしよう。コンセント数が多ければそれだけ接続できる機器が増えるということだ。「BY50S」は4口に対し、競合である「CPJ500」「BR550G-JP」は6口ある。4口だと、デスクトップPC、無線LANルーター、モデム、それにNASを接続したらいっぱいになってしまう。

停電が起こったばかりはこれでも足りるが、停電が長引くと連絡や情報収集手段として多くの人が利用しているスマートフォン/タブレットの充電ができない。そう考えると6口ある方が心強いだろう。

使い勝手と本体サイズ/重さを比較

次に使い勝手の面を見ていこう。平たくいえば、UPSとは非常用バッテリだ。使用の際、気になるのがバッテリの残量になる。例えば、停電時に接続した機器に給電している際、UPSにどれだけバッテリが残っているか、確認する機能があればベターだ。

「BY50S」は、「状態表示ウィンドウ」と「バッテリ交換表示LED」を搭載し、UPSの状態が一目でわかるようにしているが、「CPJ500」「BR550G-JP」はより視認性の高いインテリジェント多機能LCD操作画面を搭載している。「BR550G-JP」は、運転モード、システムパラメータなど、より詳細な情報を確認できるほか、「CPJ500」はバッテリモードへ移行する入力電圧閾値の高中低3段階設定や、バッテリモードへ移行する最大/最小電圧閾値の個別設定などの操作ができる。

もちろん、初心者はバッテリ残量の確認だけで十分だと思うが、UPSの電力を効率よく使おうと思ったら、本体の画面で設定できるモデルを選んだ方が使い勝手はいいはずだ。

また、常に設置しておくものなので、なるべくコンパクトなモデルがいい。今回ピックアップした3モデルのなかでは「BR550G-JP」が高さ190×幅91×奥行き310mmと最も大きく、また7.1kgと最も重い。持ち運んだり、設置場所を常に変えたりするものではないが、これだけ重量があるとメンテナンスの際に手を焼きかねない。

一方、「CPJ500」「BY50S」は、両モデルとも4Kg台だ。なかでも「CPJ500」は高さ167×幅92×奥行き278mmと最も小さく、重さは4.1kgと最も軽い。このコンパクトさは限られたスペースに設置する場合、ユーザーにとって重要なポイントになる。また、側面にゴム足がついており、横置きにも対応しているので、設置場所に合わせて縦置き、横置きを選ぶことができる。

出力波形の違いをチェック

ここまで、出力コンセント数、使い勝手で比較すると「CPJ500」「BR550G-JP」の二つに選択肢が絞られていく。次に注目したいのが出力波形だ。コンピュータに適しているのは一般のコンセントに来ている電流と同じ正弦波出力だが、これに対応しているかどうかが重要だ。

これまで小型のUPSは矩形波出力のモデルが多かった。しかし、先述の通り最近の多くのPCは正弦波出力UPSを必要とする電源を採用している。「CPJ500」「BY50S」は正弦波出力に対応しているが、「BR550G-JP」は、発売時、矩形波出力の仕様だった。そのため、最近のPCに対応できるよう「近似正弦波」出力に仕様を変更した。ただし、出力波形で見た場合、正弦波の方が、近似正弦波よりもより接続機器にやさしい波形なので、「CPJ500」を選んだ方がいい。

最後に、価格とサポート体制をチェックしよう。ネット市場の税込み価格では、「BR550G-JP」が1万5090円、「BY50S」は1万8360円とやや高かった。それに比べて、「CPJ500」が1万4280円と価格は手ごろだった。

保証期間は、オムロン、サイバーパワーとも3年間なのに対し、シュナイダーは2年間だ。さらにサイバーパワーは、サポートサービスを利用するための事前登録が不要で、修理を依頼する際に保証書やレシートなどを用意するだけでいい。また、交換の際には交換機がメーカーから届いてから発送すればよいので、UPSが手元にない空白の期間がないので安心だ。

同容量帯の3モデルを比較したが、出力コンセント数、使い勝手、サイズ、そしてサポート体制で差が出た。上記のポイントをしっかり抑えて、いざという時にしっかりと備えることができるUPSを選びたい。

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。