『CHICAGO』公開稽古より (撮影:西村康) 『CHICAGO』公開稽古より (撮影:西村康)

鬼才ボブ・フォッシーの演出・振付で1975年に初演され、トニー賞では11部門でノミネート。1996年にはリバイバル公演が再び大ヒットを記録し、2002年にリチャード・ギアやレニー・ゼルウィガーらで映画化されるやアカデミー賞を受賞するなど、ミュージカル界の金字塔として知られる『CHICAGO』。日本版も2008年の初演に続きブロードウェイキャストを迎えた2010年の再演と、常にミュージカルファンから熱い注目を浴びてきた。その日本版で主役のロキシー・ハートを演じ続けている米倉涼子が、本場ブロードウェイで7月の公演に出演することが発表されたのは周知の通り。6月の渡米を目前に控えた米倉の公開稽古が5月22日、都内のスタジオで行われた。

ブロードウェイミュージカル「CHICAGO」 チケット情報

ピアノの横に音楽監督と歌唱指導者が待つ稽古場に入ってきた米倉は、体にフィットした黒一色の稽古着姿。常ならばドラマや舞台で見せる華やかな笑顔が取材陣にも向けられるのだが、心なしか緊張の面持ちだ。この日は、殺人罪で世間に名前を知られたロキシーが、その注目を逆手にとってショースターになると歌い上げる『ROXIE』ほか2曲が披露された。腰や肘、手首など関節をなめらかに動かすことでエロティックかつ優雅な動きを生む“フォッシーダンス”だけでも至難のわざだが、ブロードウェイの舞台ともなれば、その動きに呼応して紡がれる英語歌詞も当然要求される。米倉は『CHICAGO』ならではのリズムと微細な表情を次々に繰り出し、ダンスと共に発する歌も自然そのもの。ストイックなほど研ぎ澄まされた体の動きと同時に、持ち前の圧倒的な存在感も随所に感じられた。

稽古後の合同インタビューでは、週の大半を使って繰り返されるブロードウェイのクリエィティブチームとのレッスンで「たくさんの発見があった」と話す米倉。英語独特のニュアンスや韻を踏む歌詞などをひとつひとつ体になじませることで、「ロキシーは浮わついた、可愛い子ぶった女というだけじゃないのではという、ずっと引っかかっていた部分が解消されていった」と語る。それでも「まだ気持ちよく歌い踊るところまではいってません。むしろブロードウェイでのリハーサルまで、そっちに流れないように気をつけていきたい」と表情を引き締める。「あちらの観客にも『なぜ日本人が?』と思われるだろうということは覚悟しています。でもせっかくこんなに大きなチャンスをもらったのだから、“やり遂げた”という経験はして帰りたい」と率直な心境を聞かせてくれた。国籍がどこであろうと、舞台での結果が全てとなるブロードウェイ。役者の武器は、鍛え抜かれた体ひとつだ。ただひたすらに稽古に励む米倉の成果を、今は楽しみに待ちたい。

米倉が出演するブロードウェイ公演は、7月10日(火)から15日(日)までニューヨーク・アンバサダー劇場で上演が予定されている。なお、日本凱旋公演は8月30日(木)から9月16日(日)まで東京・赤坂ACTシアターにて上演される。チケットは発売中。

取材・文:佐藤さくら