田原健一 写真:石渡憲一
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やがて映像では1992年5月10日から2012年5月10日までの年月がカウントアップされ(この演出はこの日限りのものだろう)、オープニング・ナンバーを飾る『エソラ』のイントロとともにツアー・タイトルが表示される。大衆音楽の本質と可能性をカラフルなサウンドスケープで描いた『SUPERMARKET FANTASY』(2008年リリース)のリード曲であるこの『エソラ』は、今ではMr.Childrenのポップネスをもっとも瑞々しく形象化する1曲として愛されている。そのまま『箒星』、『youthful days』とつながれていくのだから、たまらない。

ステージに立つメンバーは、Mr.Children+小林武史から成る盤石の5人編成。近年のツアーはこの編成で固定されているが、20周年のステージを5人だけで彩るのはやはり感慨深いものがある。前線に立つ桜井、田原、中川の3人はのっけから広いステージを動き回り、満面の笑顔を浮かべ飛び跳ねるオーディエンスに近づいていく。

中川敬輔 写真:石渡憲一
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桜井のMC。『GIFT』の“君とだから探せたよ 僕のほうこそありがとう”という歌詞の一節が、バンドの感謝の念を端的に言い表しているということ。そして、「大事なのは、これからもよろしく」とオーディエンスに伝えた。現在進行形のMr.Childrenを軸に置きながら、ベスト・オブ・ベストなメニューを広げていくなかで、“え、これをやるんだ!?”と驚かされた楽曲も披露した。それは、今のMr.Childrenには、どんな楽曲を体現しても揺るがない芯があることを証明する選曲でもあった。

そして、『終わりなき旅』の前に桜井が語ったこのひとことがとても印象深かった。
「次にお届けするのは、Mr.Childrenの曲ですけど、お客さんの、みんなの、おまえらの曲であってほしいと願っています」
Mr.Childrenというバンドのメッセージ性が集約されているともいえるこの楽曲が、4万人の大合唱とともに響き渡る感動は、格別だった。

 

『365日』や『しるし』、あるいは花道に設けたサブ・ステージに移動しミニマムなアレンジで奏でた『くるみ』と『Sign』。老若男女の感性を包括するラヴソングの普遍性と強度にあらためて驚かされ、満たされた。『Worlds end』から『fanfare』、そして本編ラスト『innocent world』へと導かれていった展開では、スケールの大きな多幸感が一人ひとりのオーディエンスを潤した。