昔、お好み焼き屋の老舗「染太郎」で、お好み焼きの焼き方の極意を教えてもらったことがある。ヘラで押してはならないというのだ。「せっかくおいしそうにふくらんだのだから、女性のように、やさしく扱え」と厳命された。

ところが、このピッツェリアでは、ふっくらとふくらんだ揚げピッツァを、フォークとナイフで押しつぶし、ぺっちゃんこにして食べろというのである。

「押すことで、中心に集まったパンチェッタコッタが均等に散らばり、よりおいしくなります」

ピッツァ・フリッタの断面アップ

揚げてあるのにぐどさがまったくなく、軽い仕上がり。
カリッと揚がった食感、パンチがきいた黒胡椒、チーズの風味がよくマッチしている。

乱暴な言い方をすると、カルボナーラの味に似ている。卵こそ使っていないが、乳製品のリコッタチーズと燻製モッツァレラ、ベーコン、黒胡椒が醸し出す味わいは、カルボナーラにちょっと似ている。

近頃、ピッツァ・フリッタを出す店が増えているようだが、この店はナポリで人気の「ラ・フィーリア・デル・プレジデンテ」の日本進出第1号店だ。

「ピッツァ・フリッタはナポリ本店の一番人気で、横浜の店でもその味を再現しています」

「水牛」からできたモッツァレラ「モッツァレラ・ディ・ブッファラ」

ラ・フィーリア・デル・プレジデンテ。日本語に訳すと、大統領のピッツァ職人の娘。
ナポリ訪問中のクリントン前大統領に、ひとりのピッツァ職人がピッツァをふるまった。そのピッツァをクリントンがたいそう気に入った。

それが自慢の種で、ピッツァ職人は独立した際、「イル・ピッツァイオーロ・デル・プレジデンテ」(大統領のピッツァ職人)をナポリに開業した。
その娘マリアがナポリで始めたのが、ラ・フィーリア・デル・プレジデンテである。

マリアには、日本で開業したいという思いがあった。できればナポリと同じ港町でと考えていた。横浜市内にあるイタリア食材のインポーターとタッグを組むことになったことから、横浜で開業したというのである。

本場ナポリピッツァを提供するため、横浜のインポーターが扱うナポリ産の食材を使っている。
小麦粉はナポリ産100%。モッツァレラもナポリ産。ナポリの本店や、ナポリのピッツェリアが愛用するイオヴィーネというチーズ工房産を選んだ。

そのモッツァレラには2種類ある。牛乳で作ったタイプと、水牛で作った「モッツァレラ・ディ・ブッファラ」だ。
本来は水牛で作ったものが、モッツァレラだった。

水牛

ところが、水牛の数が減ってきたこともあり、水牛以外で作ったものも近年、モッツァレラと呼ぶようになった。