怜:何も知らないからこそ、“知らない強さ”があった

——(笑)。将さんのヴィジュアルショックは怜さんだったということですが、怜さんが特にアートワークの面で参考にしたモノってなんだったんでしょうか?

怜:んー、なんだろ。かなり前だからね。でも、俺も血糊のついた包帯巻かされたな(笑)。俺もそれこそL'Arc〜en〜Cielとか、DIR EN GREYとか、そういうテレビに出てるヴィジュアル系しか知らなかったんだけど、圭に出会ってたくさんのヴィジュアル系と言われる世界観や音楽を教えてもらってさ。「包帯巻いて! 白塗りして! 寄り目して!」とかちっちゃいことから習ったよ(笑)。

何も知らない状態だったけど、だからこそ“知らない強さ”ってのはあったかも。メイクに関しても、当初いろいろと見たものだけではなくて、更にいろんなカラーを混ぜてみたり、ほんと思うままに自由にやってた。洋服が好きだったから「じゃあ洋服屋さんと何かやりたい!」って思ったりね。

将くんが見たやつも多分、当時俺が仲良くしていたアパレルショップとコラボして作ったアートワークだったと思うよ。知らないからこそいろんな挑戦ができてたんじゃないかな。

怜さん(BAROQUE) 撮影:shimadamasafumi

——BAROQUE って音楽的にもルックス的にも、ものすごくいろんな挑戦をされてましたよね。その挑戦の結果、いわゆる“オサレ系(ヴィジュアル系のサブジャンルのひとつ)の始祖”と言われて。

将:“オサレ系”、つまりBAROQUE が「既製品の衣装で濃いメイクをし、シャッフルの曲調があって、ヴォーカルの前髪が短い」っていうムーヴメントを作って……。

怜:前髪! 詳しいなあ(笑)。

将:あはは(笑)。そう、そのムーヴメントにみんなが乗っかった時があったんですよ。「君たちはそれじゃなくない?!」って感じの結構なおっさんバンドもそこに乗っかってたし、「BAROQUEになるかDIR EN GREYみたいな黒い感じになるか」、って時代がありました(笑)。

そんななかで、初期のA9はKagrraっていう和風なコンセプトのバンドが先輩にいたこともあり、“和洋折衷”というテーマを掲げつつDIR EN GREYよりの黒っぽいテイストで頑張ってた。でも、俺自身はめちゃくちゃ怜くんに影響を受けていたな。怜くんのインタビューを読んで、「GO!GO!7188や椎名林檎が好きなんだ……! 俺も聴いてみよう!」って思ったり(笑)。

怜:えー! そんなに見てたの? すっげぇ恥ずかしい!(笑)

——めちゃくちゃファンですね……!

将:そう! だから本当にウレぴあさん、今日の対談を用意してくれてありがとう……(笑)。

将:BAROQUEが大好きだったからこそ、ただ真似をするのは嫌だった

怜:いやー、普段そんな話にならないじゃん? 普通にふたりでカラオケに行ったこともあるしさ。俺、そんなに飲みに行ったりするタイプじゃないし、飲むぐらいなら歌おうよってなったんだよね。喋るの得意じゃないから、ヴォーカリスト同士なら歌聞いた方が分かり合えるって思ったの。いろいろ歌ったよね。

将:いやー、楽しかったね。

怜:俺も将くんのルーツが垣間見れて楽しかったな。他のアーティストの曲を歌っても、やっぱり将くんらしくなる。自分にはできない声質や表現に、「おお~、俺もこんな声出してみたいな」とか。「じゃあ俺はこれを歌うから聴いてみて」的なやりとりをしてね。

将:怜くんの歌が大好きだから、幸せな時間でしたよ。普段、なかなか言えないよ、こんな「好きです!」みたいな(笑)。

でも、日本語を大事にして、日本的な綺麗なメロディの曲で……、っていうところにはすごくBAROQUEに影響を受けたけど、BAROQUEが大好きだったからこそ、ルックスの面なんかはただBAROQUEの真似をしてる奴等がすごく嫌だった。だからこそA9はどう見せていったらいいかなっていうのは考えましたね。