デジタルカメラの画素数は、ここ数年の間に大幅にアップした。一時期頭を打ったかにみえた高画素化だが、昨年夏あたりからまた一段と進みはじめ、レンズ交換型デジタルカメラ(デジタル一眼カメラ)は、2011年9月以降、「1600万画素以上」が月間販売台数の半数以上を占めている。コンパクトデジタルカメラでも、2011年11月以降、「1600万画素以上」が4割を超え、2012年4月には初めて5割を突破した。モデルチェンジに伴い、従来の1200万~1400万画素台から1600万~1800万画素台へ、シフトしつつある。

必ずしも、高画素=高画質というわけではない。撮像素子のサイズや種類、画像処理エンジン、レンズの性能などにも左右される。そして何よりも、撮影者のテクニックによって写真のクオリティは変わる。それでも、製品を比較する際、画素数を気にする人は多いだろう。今回は、量販店の実売データを集計した「BCNランキング」をもとに、「画素数」に焦点を当て、デジタルカメラの「進化」の軌跡を振り返ろう。

●画素数でわかる購入時期、400万画素以下のデジカメはさすがに買い替えを

お手もちのコンパクトデジタルカメラの画素数は、何万画素だろうか? 400万画素以下なら、購入時期は今から5年以上前のはず。そろそろ買い替えを検討したほうがいい。最新のカメラは画素数だけではなく、カメラまかせのオート撮影、高速連写、動画撮影など、機能面で大きく向上しているので、より簡単に、楽しく撮影できるはずだ。600万~800万画素でも、購入から3~4年ほど経っているはず。バッテリのもちや画質など、何らかの不満点があれば、デジタル一眼カメラへのステップアップを含め、買い替えや買い増しを検討してもいいかもしれない。

●コンパクトデジカメの画素数は「800万画素未満」から「1600万画素以上」へ

2005年から2011年まで、過去7年間のレンズ一体型デジタルカメラ(コンパクトデジタルカメラ)について、400万画素ごとに販売台数構成比を集計すると、2005年には全体の90.6%を占め、最も販売台数が多かった「400~800万画素未満」は年々減少し、2008年には13.0%、2009年には1.8%まで下がった。2006年5月に、カシオ計算機が初の1010万画素のコンパクトデジタルカメラ「EX-Z1000」を発売し、やや落ち着きつつあった画素数競争が再燃したためだ。

当時は、画素数と価格の相関性が高かったので、予算に応じて画素数で選ぶ傾向が強かった。2007年は800万画素台、2008年以降は1000万画素台を中心に、「800~1200万画素未満」の構成比が拡大していったが、2008年の79.2%をピークに減少に転じた。2009年から2010年にかけて、最も販売台数の多いボリュームゾーンは「800~1200万画素未満」から「1200~1600万画素未満」にシフトした。ほとんどの機種が1200万~1400万画素台になり、ほぼ横並びになった。2011年には、「1200~1600万画素未満」の構成比は前年の75.6%から64.8%に減少し、代わりに前年は該当製品が存在しなかった「1600万画素以上」が26.1%を占め、2番手に躍り出た。

より細かく、200万画素ごとに区分すると、2007年の時点ではわずか7.1%に過ぎなかった「1000~1200万画素」は翌2008年には42.9%に、2008年に7.2%だった「1200~1400万画素」は翌2009年は43.0%に、2009年に1.0%だった「1400~1600万画素」は翌2010年には34.3%に、それぞれ急上昇した。おおむね1年に200万画素ずつアップし、継続して上がり続けている。

3年前の2009年4月以降、月ごとの推移をみると、2009年5月に「1200~1600万画素未満」が「1200万画素未満」を上回った後、2010年1月まではあまり変化はなかった。各社が新製品を発売した2010年2月以降、「1200~1600万画素未満」の構成比はさらに上昇し、2011年1月には最高となる86.0%に達した。しかし、2011年3月以降、「1600万素以上」が徐々に伸び始め、ついに2012年3月に逆転した。4月は「1600万素以上」が全体の51.7%を占め、すでに主流になりつつある。

わずか7年の間に、コンパクトデジタルカメラの画素数は1000万ほど向上した。かつて大多数を占めていた「800万画素未満」は、今では「トイカメラ」といわれるジャンルの製品に限られる。今年に入って、ソニーの「Cyber-shot WX100」「Cyber-shot HX30V」など、有効1800万画素以上のカメラも登場しており、高画素化はまだまだ進みそうだ。

●デジタル一眼カメラは「1600万画素以上」が主流、3000万画素台の高級機も

小型・軽量のミラーレス一眼、従来のデジタル一眼レフを合わせたレンズ交換型デジタルカメラ(デジタル一眼カメラ)の画素数も、2005年から7年間の間に大きく向上した。ただ、コンパクトに比べると、もともと画素数が高かったため、変化のスピードは緩やかだ。2005年から2008年までは、「800~1200万画素未満」が最も販売台数が多く、有効610万画素のニコンのデジタル一眼レフ「D40」が、2006年12月の発売以来、ずっと売れ続けていたために、「800万画素未満」の構成比も1割を超えていた。その後、ボリュームゾーンは「800~1200万画素未満」から「1200~1600万画素未満」にシフトしたが、2011年は「1200~1600万画素未満」が前年の69.9%から54.2%に下がり、代わって「1600~2000万画素未満」が21.4%から42.2%に上昇した。

コンパクトデジタルカメラと同様に、3年前の2009年4月以降、月ごとの推移をみると、「1600~2000万画素未満」は、2010年3月から上昇し、7月には2割、10月には3割、2011年6月には4割、9月には3割を初めて突破した。「2000万画素以上」は、2012年2月から上昇し、3月は9.8%を占めた。

2010年6月に、HOYA(現ペンタックスリコーイメージング)が有効約4000万画素の中判デジタル一眼レフカメラ「PENTAX 645D」を発売し、デジタルカメラの画素数の最高値は、2000万台からいきなり4000万台にアップした。今年3月には、ニコンが35mmフルサイズ対応デジタル一眼レフカメラでは世界最高となる有効3630万画素のプロ・ハイアマチュア向けモデル「D800」を発売し、話題を集めた。これら2000万画素以上の高級機を含めた「1600万画素以上」の構成比は、2011年9月以降、5割を超え、2012年3月には61.8%、4月は59.3%と、6割前後まで高まっている。さらにニコンは、5月24日、有効約2400万画素のデジタル一眼レフカメラ「D3200」を発売した。他社も同様に2000万画素クラスの入門機を投入してくる可能性は高く、今年はさらに高画素化が進みそうだ。

●伸びるデジタル一眼、ほぼ横ばいのコンパクトデジカメ

2008年以降、デジタルカメラの販売台数は、前年比95.0~115.3%と、頭打ち状態が続いている。それでも、デジタルカメラ全体の販売台数に占めるレンズ交換型タイプの構成比は年々拡大し、2011年には15.0%に達した。レンズ交換型デジタルカメラの販売台数は、2008年から2011年まで4年連続で前年を上回り、右肩上がりで伸びている。一方、コンパクトデジタルカメラは、2010年を除いて前年をやや下回り、ほぼ横ばいの状況が続いている。画素数アップは、販売台数の増加にはつながっていない。

●スマートフォンのカメラにも高画素化の兆し 現在の主流は800万画素台

現在、コンパクトデジタルカメラの最大の競合相手は、「スマートフォン」だといわれている。とはいえ、スマートフォンのカメラの画素数は、2011年5月までは「800万画素未満」、それ以降は「800~1200万画素未満」がボリュームゾーンで、デジタルカメラよりもだいぶ低い。しかし2011年12月以降、「1200~1600万画素未満」の構成比が伸び、3割を超えるようになった。カメラ機能をウリにする機種も増え、将来的にはコンパクトデジタルカメラと同じ水準に追いつくだろう。

1995年にカシオが発売したデジタルカメラ「QV-10」は、わずか25万画素だった。今は、スマートフォンのカメラでも500万画素以上、コンパクトデジタルカメラなら、最も安い価格帯の製品でも1400~1600万画素台だ。デジタルカメラが普及し始めた頃と比べると、隔世の感がある。また、各グラフをみればわかる通り、一定の間隔を経て、より高い画素数へ移り変わっている。今後、いったいどこまで上がるのだろうか。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。

*本記事の「画素数帯別構成比」のデータには、メーカーが画素数に関する情報を公開していなかった「画素数不明」の製品は含まれておりません。