宝塚歌劇星組『桜華に舞え-SAMURAI The FINAL-』『ロマンス!!(Romance)』 撮影:三上富之

宝塚歌劇星組トップコンビ、北翔海莉(ほくしょう・かいり)と妃海風(ひなみ・ふう)の退団公演となる『桜華に舞え-SAMURAI The FINAL-』、『ロマンス!!(Romance)』が、8月26日、兵庫・宝塚大劇場で幕を開けた。

宝塚歌劇星組『桜華に舞え-SAMURAI The FINAL-』『ロマンス!!(Romance)』チケット情報

第一幕の『桜華に舞え-SAMURAI The FINAL-』は、明治維新の立役者のひとり、桐野利秋を主人公にした物語。人並みはずれた度胸と剣の腕を持つ利秋は、西郷隆盛と出会い、忠義を尽くすことを決意。幼なじみの隼太郎と共に京に上り、幕末の動乱の中で頭角を現していく。維新後の明治新政府では陸軍少将に任じられながらも、西郷と共に鹿児島へ下野。西南戦争へと身を投じることになる…。

テンポ感のある展開が心地良く、薩摩なまりのセリフもどこか温かみを感じる。そしてラストへ向けて増していく切なさ…。その緩急が観る者の心を揺さぶる。銀橋(本舞台の前面にあるステージ)に侍がズラリと並び「男の生き様を見せてやる!」と歌うオープニングは壮観だ。北翔が演じる利秋は、戦のときには豪快に、会津の武家娘・大谷吹優には包み込むような優しさで接し、志を同じにしながらも次第に道を違えていく隼太郎の気持ちも尊重する懐の深さを持つ。そんな利秋の姿が、星組を率いてきた北翔の姿にも重なる。

吹優を演じる妃海も、利秋への想いに揺れながらひたむきに生きる女性を熱演。利秋との心の繋がりが優しく、切なく描かれている。さらに、次期トップスターとなる紅ゆずるが隼太郎役を情感たっぷりに演じて魅せる。政府軍に身を置いたことで離れていく隼太郎と故郷の人たちとの心の距離に切なくなり、クライマックスで隼太郎が感情を爆発させるシーンには胸を掴まれる。ほか、北翔と同期で西郷役を務める美城れん、郷里・薩摩への想いを断ち切り、政府側として戦う川路利良役の七海(ななみ)ひろきや、利秋への復讐に燃える八木永輝役の礼真琴(れい・まこと)らの好演も作品に深みを与えている。

第二幕のショーは、クラシカルでロマンチックなイメージ。パステルカラーの“ザ・タカラヅカ!”な衣裳で歌い踊るプロローグに、ピアノの伴奏にのせてしっとりとデュエットするシーンもあれば、一転、ロックンロールで華やかに魅せるシーンなど、多彩な展開で楽しませてくれる。中詰めでは客席降りで盛り上げ、組子が北翔を囲むサヨナラ公演らしい演出も。お芝居、ショー共に、集大成となるステージにぴったりの演出。北翔の魅力が最大限に引き出されている。

10月3日(月)まで兵庫・宝塚大劇場にて上演中。その後、10月21日(金)から11月20日(日)まで東京宝塚劇場にて上演される。

取材・文:黒石悦子