東京”と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろう?
首都、流行の中心、人が多い、空気が汚い、眠らない都市……

個人的に、音楽で真っ先に思い出すのが、90年代に「渋谷系」として一斉を風靡したピチカート・ファイヴだ。

代表曲『東京は夜の七時』に顕著なように、彼らの歌に出てくる東京は、キラキラしてて、でもどこか儚げで、実際に存在する東京とは少し違う、“架空の都市・トーキョー”というべきものだった。

 

PIZZICATO FIVE『東京は夜の七時 - The Night Is Still Young』

 
彼らは21世紀が幕開けてすぐの、2001年3月に解散(後に発売されたベスト盤のタイトルは『THE BAND OF 20TH CENTURY』だった)。その直後に9.11テロが起き、享楽的でハッピーな“トーキョー”は、姿を消してしまった。(でも今こそ、ピチカートみたいな腹括ってポップ・ミュージックをやるバンドが必要だと思うんだけどな)

それから10年後の、2011年10月15日。東京のど真ん中、日比谷野外大音楽堂で、東京名所をユーモアたっぷりに紹介する大正時代の流行歌『東京節』を高らかに鳴らすバンドがいた。演奏しているのはZAZEN BOYS、バンドを率いるのは向井秀徳(むかい・しゅうとく)。福岡出身、バンド“NUMBER GIRL”でキャリアをスタートさせ、椎名林檎や宮藤宮九郎などクリエイターからも熱い支持を集めるミュージシャンだ。

この日は『THE MATSURI SESSION』と題して、向井が率いるバンド(ZAZEN BOYS)とユニット(KIMONOS)、そして彼のソロ(向井秀徳アコースティック&エレクトリック)が登場する、プチフェス的な趣き。ZAZEN BOYS・4人→KIMONOS・2人→ソロ・1人と、ステージ上がだんだん地味になっていくという構成も、彼らしくておもしろかった。

以下、当日のライブでも披露されたそれぞれの楽曲↓

 

ZAZEN BOYS 『Asobi』

 

 

Kimonos - Soundtrack To Murder

 

向井秀徳 - ふるさと

 

 
野音なので当然、野外。当然、酒が進む進む。そして当然のように、会場には酔っ払いがあふれていた。自分はライブ後に仕事があったので、缶ビール2本に抑えましたが(←飲んだのかよ)。

ZAZEN BOYSは久々の新曲を披露しつつ、相変わらずの鉄壁アンサンブルを展開。向井とLEO今井によるユニットKIMONOSは奇形シティ・ポップスといった趣きで、ビルに囲まれたシチュエーションが似合う、浮遊するサウンドが最高だった。トリのソロ弾き語りでは、秋の気配を感じながらジンワリ沁みる歌声を堪能。本編ラストの『自問自答』は、3.11を経てより心に刺さった。

イベント終盤、ソロのステージのMCで向井は、「今日のコンセプトは、“東京の歌”を鳴らすというものなんです」というようなことを言った。

彼の楽曲にたびたび登場する“冷凍都市”というフレーズにも象徴されるように、向井秀徳の都市感はとても荒涼としている。彼は「冷凍都市とは、実際にある都市のことではない」とも語っていて、自らの殺伐とした都市感を投影するため、“冷凍都市”という言葉を生み出したのだろう。

人々の思想や価値観が入り乱れ、一歩間違えば刺し違える緊張感を感じながらも、淡々と続いていく(しかない)都市の無常感を、変拍子、奇妙なリフ、鋭利な言葉で切り込んでいく向井秀徳の世界観は、現在の東京のいち側面をリアルに捉えていると思う。そんな彼の世界観を3つの活動形態をとおして味わうことができた、貴重な夜だった。

さて、いまの東京のまた別の側面を体現しているのが、AKB48を筆頭として隆盛する女子アイドル・グループシーンだ(かなり強引なつなぎ方
ですが)。

秋葉原から誕生したムーブメントはいまや東京を飛び出し、地方、さらには海外にも飛び火している。なぜいまアイドルたちが求められているのか、自分自身取材を通して、アイドルという存在のおもしろさや奥深さを実感している。(つか、みんな本当にかわいすぎる!!!感涙 ←バカ)

停滞、というか、ゆるやかに沈んでいくような鈍い倦怠感で覆われているいまの日本において、アイドルたちが生み出す“熱”の存在感は日に日に増している。次号のAKB48特集、そして女子アイドル・グループ特集で、彼女たちが生み出す“熱”の正体を読み解きたい。